2007年10月18日(木)「しんぶん赤旗」
カスピ海沿岸5カ国
他国攻撃に領土使わせない
首脳会議で共同声明
中央アジアのカスピ海を囲む五カ国(ロシア、イラン、カザフスタン、アゼルバイジャン、トルクメニスタン)でつくるカスピ海沿岸首脳会議が十六日、イランのテヘランで開かれ、「自国領土をカスピ海沿岸の他国攻撃に使用させない」とする共同声明を採択しました。ブッシュ米大統領がイランに対し「すべての選択肢がある」と述べ、武力攻撃も排除しない姿勢をとっていることをけん制したものです。
ロイター通信によると、ロシアのプーチン大統領は「われわれはこの地域で武力を行使することはまったく考えていない。カスピ海沿岸国が、他国攻撃のために自国領土を使用させることを不可能にする合意は必要だ」と強調しました。イランのアハマディネジャド大統領は、「この協力はカスピ海での相互の軍拡競争を回避し、敵対勢力をよせつけず、組織犯罪ともたたかうものだ。近い将来に地域共同体が求められるだろう」と述べました。
共同声明は、イランの核開発問題を念頭に、核不拡散条約(NPT)を「国際安全と安定の基本的な柱」として順守する立場を表明する一方、「NPT参加国は平和的な目的で核エネルギーの研究、生産、使用を発展させる権利を持つ」とうたっています。
首脳会議は、経済協力強化のため新たな経済機構を創設し、来年モスクワで初会合を開催することを決めました。しかし、懸案のカスピ海の法的地位については、協議継続を確認するにとどまりました。会議はカスピ海底を通るパイプラインの是非などについても話し合いました。
カスピ海は世界有数の石油・天然ガスなどの豊富な地域です。ソ連崩壊後、その資源をどう分配すべきかで沿岸諸国は対立。欧米諸国も、石油資源の宝庫として強い関心を示し、沿岸諸国へのてこ入れに躍起になっています。二〇〇二年にトルクメニスタンで開かれた第一回首脳会議は資源問題で不調に終わり、その後も毎年延期されていました。
共同声明は、カスピ海をめぐるあらゆる問題の平和的解決や、首脳・外相会談の定期化をうたっています。(片岡正明)