2007年10月16日(火)「しんぶん赤旗」

主張

消費税増税論

本当の受益者を隠すごまかし


 開会中の国会で、福田康夫首相が消費税の増税に固執する姿勢を改めて示しています。所信表明演説で「早急に国民的な合意を目指して本格的な議論を進め、消費税を含む税体系の抜本的改革を実現させる」と表明し、代表質問への答弁でも同様の発言を繰り返しました。

 安倍晋三前首相は参院選で「消費税を上げないなんて一言も言っていない」といいながら、国民に審判を仰ぐのは「次の衆院選で」とのべ、最後まで論戦から逃げ続けました。いまさら、政府・与党に消費税の増税を持ち出す資格はありません。

「受益者負担」を盾に

 消費税はぎりぎりのくらしをしている人の生活費にも容赦なくかかり、低所得者ほど所得に対する負担の割合が重くなる逆進性を持った税金です。高所得者に軽く低所得者に重い消費税は貧困と格差をさらに悪化させ、所得税や法人税など日本の税制の中で、もっとも社会保障の財源にふさわしくない税制です。

 消費税の逆進性について聞かれた福田首相は、社会保障の安定財源として「所得に対する負担の重さを論ずる際には、受益にも着目する必要がある」と衆院本会議で答弁しています。消費税が逆進的であることを否定できなかったと同時に、「受益者負担」論を盾に取って、低所得者に重い負担を強いる消費税増税を正当化する姿勢を示しました。

 「受益者負担」論とは、「受益」が多い人ほど「負担」を重くするのは当然だという議論です。高品質の物やサービスには高いお金を払わなければならない、所得の格差が受益の格差を生むという市場を支配する論理にほかなりません。

 それを社会保障に持ち込むことは、弱い立場に立たされた国民を支援する社会保障の本来の役割を破壊することに直結します。

 実際に障害者自立支援法で導入された「応益」負担で過酷な負担増を強いられ、施設利用をやめざるを得なくなった障害者は、厚生労働省の調査でも全国で千六百二十五人に上っています。医療の分野でも、財界・政府がふりかざす「受益者負担」論によって、制度改悪が繰り返されてきました。特に医療の支えが必要な高齢者に大幅負担増を迫る「後期高齢者医療制度」に、国民の批判が噴出しています。

 福田内閣は障害者自立支援法の見直し、高齢者負担増の凍結の検討に追い込まれており、「受益者負担」論の破たんは明白です。

 社会保障は弱肉強食の資本主義経済の中で、いやおうなく弱い立場に立たされた人びとのくらしを少しでも引き上げ、貧困と格差の是正を図る社会的連帯の制度です。低所得層には重く、高所得層には軽い消費税は、社会保障の目的や役割を踏みにじる文字通りの「福祉破壊税」です。

「聖域」にメスを

 政府税調は「消費税を増税して企業減税の財源に充てる」ことは「有力な選択肢」だとしています(井堀利宏主査、二日の記者会見)。財界の要求通りの路線です。財界は大企業の年金保険料などの負担を消費税に置き換えることも狙っています。消費税増税の隠れた本当の受益者は財界・大企業にほかなりません。

 合計七兆円に上る大企業・大資産家へのゆきすぎた減税を改め、五兆円もの軍事費にメスを入れれば、福祉を壊す消費税に頼らずとも数兆円規模の大きな財源を生み出せます。財源と言えば消費税しかないかのような議論は、この「聖域」に触れさせないためのごまかしです。


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