2007年10月16日(火)「しんぶん赤旗」

中教審部会

徳育の教科化見送り

再生会議提唱に反論相次ぐ


 中央教育審議会(文科相の諮問機関)は十五日、道徳教育のあり方を議論する専門部会(主査=本田和子前お茶の水女子大学長)を開き、教育再生会議が提唱した「徳育の教科化」の決定を見送り、部会の議論を締めくくりました。改悪教育基本法のもと、すべての子どもに「規範意識」を持たせるためとして徳育の教科化を狙ってきた安倍「教育再生」路線の事実上の破たんです。

 部会では「道徳教育の充実を掛け声倒れに終わらせないため、教科化を一つの有力な選択肢とすべきだ」との意見も出されましたが、「良心の自由との関連などハードルも多く、決めるのは拙速だ」「教科にすれば重視されるというのは安易だ」など反論も相次ぎました。本田主査が議論を引き取り、教科化については「一つの選択肢」と指摘するにとどめて部会での議論をまとめる考えを示しました。

 今後は教育課程部会に議論が移り、十年ぶりとなる学習指導要領の改訂案づくりが進められます。道徳を新たな教科とするには時間が不足しており、教科化が見送りとなることはほぼ確実です。


徳育教科化の見送り

特異な価値観押し付け 世論を前に行き詰まる

 中央教育審議会(文科相の諮問機関)の専門部会が十五日、「徳育の教科化」を見送る方向で議論を収束したことは、安倍前政権の特異な価値観に立った「教育再生」路線が国民世論を前に行き詰まったことを示しています。

 「徳育の教科化」は、安倍前首相肝いりの教育再生会議が今年六月に第二次報告で提唱し、中教審で審議している学習指導要領改定のテーマに、ねじ込んできたものでした。現在、小中学校で週一回行われている「道徳の時間」は、国語や算数のような教科ではなく、教科書や成績評価もありません。教育再生会議は、「すべての子どもたちに高い規範意識を身につけさせる」ためとして、徳育を「従来の教科とは異なる新たな教科」に格上げし、指導内容や教材を“充実”させることを提唱。点数評価はしないとしつつ、記述式などでの評価を検討する含みを持たせていました。

 狙いは、国が検定する教科書などで特定の価値観を子どもに押し付けることです。安倍前内閣のもとで教育基本法が改悪され、「国を愛する態度」など二十もの徳目が「教育の目標」に掲げられたことなどからも明らかでした。

 日本共産党は、上からの押し付けでなく、国民的討論と合意で市民道徳の規準を確立することを提起してきました。道徳教育については、憲法に基づき、基本的人権の尊重を中心に据え自主的に進めるべきだという立場から、戦前・戦中的な価値観を権力的に押し付けようとする「徳育の教科化」に、きっぱりと反対してきました。マスメディアも「教科にすれば文部科学省による統制が強まり、微妙な価値観を含む道徳教育が硬直し、画一化する懸念がある」(「日経」六月二日付社説)などと批判。中教審会長の山崎正和氏も徳育の教科化は「およそ学校教育にそぐわない」と反対を表明していました。

 福田内閣は教育再生会議を存続させ、担当の首相補佐官(山谷えり子参院議員)も留任させましたが、安倍前首相の辞任後会議は開かれず、今後の行方も不透明です。福田内閣は同会議のあり方を含め、安倍「教育再生」路線を根本的に見直すべきです。(坂井 希)



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