2007年10月12日(金)「しんぶん赤旗」
大企業は税軽減 国民に負担増 この異常ただせ
衆院予算委 佐々木議員の総括質問(大要)
日本共産党の佐々木憲昭議員が十日の衆院予算委員会でおこなった総括質問(大要)を紹介します。
高齢者への負担
佐々木 庶民増税が生活襲う 連動して保険料跳ね上がる
首相 不満が生ずることはあると思う
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佐々木憲昭議員 福田総理にお尋ねします。参院選の直後、八月五日付朝日新聞に「自民の大敗は年寄りの反乱」という投書が載りました。
「自民党の歴史的大敗に終わった参院選を、私は『じじ・ばばの反乱』と受け止めている。年寄りをばかにしてきた政権与党への仕返しだ」「小泉、安倍と二代の政権が年寄りに何と冷たかったことか。老年者控除や定率減税が廃止され、医療費の負担増は著しい。乏しい預貯金の利息は入らない。引退後の生活にと積み立ててきた年金記録のいい加減さが発覚した。年寄りはもう要らないから死ね、と言わんばかりではないか」「自民党の大敗が一人区に象徴されるのは、地方に暮らす年寄りたちに鬱積(うっせき)した不満の爆発だ」
七十四歳の方からのものです。総理、この声を、どう受けとめますか。
福田康夫首相 財政が非常にひっ迫している中で、社会保障は、高齢者増ということもあり、どうしても膨張し続けます。これを合理化できないのか、関係省庁は頭を悩ませています。
社会保障関係も、本当に必要なところが削られると不満が生ずることはあると思います。
社会保障は、節減はしなければいかんけれども、やはり限界があるんだろうと。そこをよく見きわめ、丁寧に施策をしていかなければいけないということでございます。
佐々木 限界があるといいましたが、もう本当に、限界を超えています。
小泉内閣と安倍内閣が高齢者に対してどれだけ負担をしいたのかというのをパネルにしてみました。二〇〇一年度から今年までの高齢者の税、社会保障の負担です。
収入三百四万円の世帯です。所得税、住民税は、これまで税金はゼロでしたが、二万七千百円の増税です。国民健康保険料も、九万七千二百円から十二万三千六百円に増えています。介護保険料は、五万二千八百円から九万三千六百円と倍近くに増えている。合わせると、十五万円から二十四万円に負担が増えているんです。この数字、間違いないですか。
額賀福志郎財務相 ご指摘の通り、夫の年金収入二百二十五万円、妻の年金収入七十九・二万円の夫婦のみの高齢者世帯の場合、〇一年には所得税と個人住民税の負担は生じていませんけれども、〇七年には所得税九千円、個人住民税一万八千円、合計二万七千円の税負担となっております。
ただ、標準的な年金、夫婦世帯で二百八十万以下の年金だけで暮らしている高齢者世帯は、基本的には引き続いて税負担が生じておりません。
佐々木 二百八十万円以下に税金がかからないのは、当たり前です。今までかかっていなかった階層が、いろいろな控除がなくなり増税になった、それが大変な事態になっているわけです。これは自治体によっていろいろ違います。
例えば名古屋市の場合、年収三百四十万円の高齢者夫婦世帯の場合、十一万円だったのが三十四万円です。三倍に引き上げられている。それから年収百八十万円の単身世帯の場合は、四万円だったのが十六万円です。四倍に引き上げられている。その上、名古屋市の場合、市独自の敬老パスなど公共サービスも負担が増えるんです。
なぜこうなったか。〇四年に高齢者の公的年金控除が縮小される、老年者控除も廃止される、その上、定率減税の廃止が行われる、このため大変な負担になったわけです。今まで税金のかからなかった高齢者に税金がかかるようになり、それに連動して国保料や介護保険料などが増える。それまで何とか自立した生活をしていた高齢者も、自立が困難になって追い詰められる状況があるんです。高齢者の反乱はそういう中で起こってきた。
この高齢者の負担増という今の状況はあまりにも急激であり、過酷だと思うんですが、どういう印象をお持ちですか。
財務相 世代内、世代間の不公平感を是正して、安定的な年金の仕組みをつくることにより、若い人にも励みを、お年寄りにも安心を与えよう。福田総理流に言えば、共生の考え方で、お互いに負担を分かち合おう、連帯して困難な時代を乗り切る、という考え方で行われたことであります。
佐々木 これだけ大負担をかぶせておいて、何かいいことをやったかのようなことを言うのはとんでもない話です。世代間の不公平とかなんとか言いますが、それなら高齢者の負担を軽減するというのが当たり前じゃないんですか。
高齢者の負担を軽減してきた今までの措置の理由として挙げていたのは、高齢者になると稼得能力が低下する、つまり収入が減るから、税制面で負担を軽くして生活を支えましょう、そういう趣旨で今までやってきたわけです。ところが、高齢者の収入は何も増えていないのに、小泉・安倍政権は負担だけを増やした。高齢者は、この上に消費税の増税があるんじゃないかと大変不安になっているわけです。
大企業優遇
佐々木 高齢者に負担押し付け もうけ倍増の大企業なぜまともに税金払わない
首相 企業の立場も考え国民とのバランス考える
佐々木 大企業に適正な応分の負担を
佐々木 消費税問題について言いますと、私たちはもともとこの引き上げに反対ですけれども、参院選のときに安倍総理は、「私は消費税を上げないとは一言も言っていない」と言って、大変な国民の批判が起こった。ついに安倍さんは、「歳出削減に努め、上げない可能性もある」と述べました。わが党の志位和夫委員長が、「そうなると、逆に言えば、上げる可能性もあるではないか」と詰めたわけですが、明確な回答はなかったんです。
福田総理、選挙のときに黙っていながら、選挙が終わったら増税だ、こういうことは通用しないと思うんですけれども、いかがですか。
福田首相 社会保障は給付と負担のバランスということがあります。また、制度一つ一つでいろいろな事情があります。だれもがよかったよかったというわけにはいかないんですよ。
財源には限りがあるので、みなさんが、満足というわけにはいかないかもしれなくても、まあ我慢はできるというところで、共生の理念でやらなければいけない。
消費税のことですけれども、安倍内閣は、秋に消費税を含む税体系全般について議論をしようと言っていたわけで、別にうそをついたとか、そういう話ではないんです。
佐々木 選挙の争点にしないで逃げていたものを、選挙が終わってから、消費税は増税だ、という話は通用しないということなんです。
財源というと、何でも政府は消費税だ、消費税だと。消費税以外はないのかということです。
消費税というのは、もともと所得の低い人に負担が重いという逆進性を持っているわけです。いわば弱い者いじめの税制です。これは上げてはならないと私は思います。税金は、利益や所得のあるところが負担能力に応じてきちっと納める、これが筋だと思うんです。
そこでお聞きします。バブル期を超える空前の利益を上げている大手企業は、まともに税金を払っていますか。
財務大臣に確認しますが、資本金十億円以上の大企業の経常利益はバブル時代のピークが一九九〇年の十八兆八千億円でした。それが二〇〇六年には三十二兆八千億円、約二倍近くに増えています。その大企業が負担している税金、つまり法人税、法人住民税、法人事業税、租税公課、この負担、どうなっているか。一九九〇年と二〇〇六年、この数字を示していただきたいと思います。
財務相 資本金十億円以上の企業の経常利益は、平成二年度は十八兆七千八百億円、平成十八年度は三十二・八三兆円です。プラス十四・〇五兆円となります。法人税、住民税及び事業税と租税公課を合わせた額は、平成二年度は十三・八五兆円、平成十八年度は十三・七四兆円で、〇・一一兆円のマイナスとなっています。
佐々木 ここにパネル(グラフ)を示しましたが、利益は約二倍になっております。しかし、税金は、今のお話にありましたように、十三・九兆円から十三・七兆円、逆にわずかですけれども、減っているわけです。
ぎりぎりの生活をしている高齢者に対して何倍もの負担をおしつけながら、空前の利益を上げている大企業がまともに税金を払っていない。これは、大企業に対して行き過ぎた減税が行われてきたからではないんでしょうか。
法人税の表面税率を取り出してここに示しましたが、43・3%だったのが、どんどん下げられまして、今は30%であります。このほかにもさまざまな名目で、例えば研究開発減税ですとか、そういう特権的な減税が設けられてまいりました。
六大銀行グループの場合、三兆円の利益が上がったけれども、法人税は一円も払っていない、こういう状況が生まれているわけです。
利益が上がっても、このように税金が逆に減っている、これはどう考えても不公平だと思うんですけれども、いかがでしょうか。
財務相 国際化の中、我が国の企業がどう伸びていくかは、すさまじい競争を演じているわけです。今、ほかの先進国は法人税を下げる競争に入っている。そういう中で、我が国の企業も何とかバブル経済崩壊後の困難な時期から立ち直りかけようとしているときに、確かに法人税を下げさせていただきました。
企業が国を選ぶ時代ですから、もう世界の共通の常識であるというふうに思っております。
佐々木 お話を聞いていると、国民の税負担はどんどん増えるのが当たり前だ、大企業の税負担はどんどん減らすのが当たり前だと。何が常識ですか。国民はみんな怒っているんですよ。
政府税調の資料でも、日本の企業負担は、例えば自動車製造業はフランスの73%です。ドイツの82%。エレクトロニクス製造業では、フランスの68%、ドイツの87%。日本の方が負担が軽いんです。それなのに、まだ減税をする。これは、全く、国民からいって非常識なやり方です。
ドイツが下がった、下がったと言う。そういう引き下げ競争をやることについて、例えば、今までもOECD(経済協力開発機構)で、そういう引き下げ競争というのはよろしくないという見解も出ていたわけです。
国民の立場からいって、大企業の減税はどこまでもやるような発想は、根本的に間違っていると思います。
何も私は極端なことを言っているんじゃないんですよ。今まで税金を払ってきたぐらいの水準は、当然払って当たり前じゃないか。下げ過ぎているところをもとに戻す。例えば十年前に戻すだけでも法人税は四兆円、あるいは、さまざまな優遇税制を正すと、合わせて五兆円ぐらいの財源は出てくるわけです。
総理にお伺いします。国民の負担が非常に増えている状況の中で大企業だけどんどん減税するのは、それこそ国民の目線で考えればおかしな状況ではないか。ある程度大企業も負担する、こういう方向に踏み出すのは当然だと思いますが、いかがでしょうか。
首相 法人税が下がったという点ですが、これは当時、日本の経済というのは非常に悪い時期で、どん底のようなときだったですね。法人税は、アジアはまだ下がる傾向があります。国民生活、そして企業の動向というものを踏まえた議論をしていただくということが必要ではなかろうかと思っております。
佐々木 景気が悪かった、だから減税をしたと。それなら今、景気は利益が二倍になっているぐらい回復しているんですから、当然、減税はもとに戻して普通に払ってもらうというのが、当たり前だと思うんです。
アジアとの競争と言いますけれども、アジアは、例えば特区のようなところをつくって、それで外国から企業を呼び込むという特殊なことをやっているわけです。そういうところと比べて無限に下げるような話はおかしい。
税金はきちっともうけに応じて応分の負担をしてもらう、そこに踏み出すというのは当然だと思うんですが、一切そういう見直しはしないという姿勢なんですか。今後の議論の中で当然それを含めて考えるべきだと思います。いかがですか。
財務相 法人税については、世界の中で日本の企業の税体系がどうか、法人税がどれくらいか、実効税率がどうか、バランスを見ながら考えたいと思っております。
佐々木 下げ過ぎたものはある程度もとに戻す、総理、そういう立場に立つのは当然だと思いますが、いかがですか。
首相 国際競争をしていく企業の立場も考え、かつ国民生活とのバランスを考えるということは税制議論の中では当然なされるべきものだと思っています。
佐々木 国民生活とのバランスを考えるなら、国民にだけ負担を負わせるのではなく、大企業は適正な応分の負担をする、そういう方向に踏み出すということをやるべきだということを申し上げたい。
大企業の膨大な利益は一体どこに回っているのか。多くは役員と大株主の懐に入っている。〇一年度から〇六年度にかけて異常に増えているのは大手企業の役員の給与・賞与であります。約二倍になっている。
株主配当金というのは四倍、大変な増え方です。しかし労働者の給与は、上がっていません。五年間でマイナスです。大企業の株主になっているのは企業が多いわけですけれども、個人もあります。その配当金は十二兆円に上っております。
財務大臣、証券優遇税制、配当金の税金は年間いくらぐらいの減税になっていますか。
財務相 (平成)十九年度の税収見込み額をもとに機械的に試算をすれば、国、地方合わせて三千億円程度です。
佐々木 配当分の減税で年間三千億円。このほか、株の売買で上げた譲渡益に対する減税があります。我々の試算では約七千億円あると見ていますが、合わせて、株に関連をして一兆円の減税なんです。株でぼろもうけしている高額所得者に何で巨額の減税をするのか。
昨年末の政府税調の答申はこう書いています。「期限切れとなる上場株式等の配当や譲渡益の優遇措置については、金融所得課税の一体化の方向に沿って、期限到来とともに廃止し、簡素でわかりやすい制度とすべきである」。期限というのは去年です。それをわざわざ一年延ばしたんです。この税調答申からいうと、逆の方向に行っている。これはやめるのは当たり前だと思うんですが、総理、どうですか。
財務相 景気が一番悪かったとき、株価が七千円台でした。そのときに、この譲渡益課税について10%に軽減したわけであります。五年限りとしたわけですが、市場の動向を見ながら、一年間延期をするということになりました。
与党においては、一年延期をして廃止することになっておりますので、我々は、今日の経済状況などを見ながら、今後、整理をしていきたいと思っております。
佐々木 与党税調は、一年延期して廃止と言っているんです。政府税調は、去年やめなさいと言ったんです。当然、来年廃止というのは当たり前でしょう。
財務相 条件は変わってきていると思いますが、日本の経済が本格的な回復軌道に乗っているわけではありません。従って、内外の経済の状況、市場の動向とかをよく見る必要があります。
同時に、国民生活のことも考えながら総合的に判断をしなければならない。
佐々木 何か煮え切らないですね。総理、はっきり廃止と。これは、去年の答申ではっきりしているんですから。
首相 この秋、議論を開始する税制改革の中で、企業、民間、いろいろなバランスを見ながら決めていくべきものだと思っております。
佐々木 こういうことさえはっきりしないようでは全然だめですね。財源、財源と言って、消費税を上げる、住民税を上げる、所得税を上げる。国民負担を増やすことを一生懸命やっていながら、(大資産家に)減税して、もうやめると言っていたものまでやめると言わないんですからね。こういうあり方そのものを根本的に変えるべきだと思います。
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非正規雇用
佐々木 大企業の正規雇用減らし低賃金の非正規置き換えを規制緩和が推進した
首相 いろんな角度で施策進める
佐々木 「日雇い派遣」直ちに禁止せよ
佐々木 先ほどのパネルでも、従業員の方の賃金がずっと下がってきているんです。その背後には、正社員を減らしながら、パート、アルバイト、派遣、契約など、低賃金の非正規雇用にどんどん置き換えていった、そういう大企業の労務政策があったと思うんです。
ある派遣労働者はこう訴えています。「正社員と同じ内容で働いているのに、交通費が出ず、保険にも入れない。国民年金や健康保険は、今のところ貯金を下ろして払っています。全くぜいたくしておらず、最低限の生活を送っていますが、同じ仕事内容なのになぜ認められないのか。むなしくなります」
厚労大臣。現在、非正規労働者はどのくらいいるのか、全労働者に占めるその比率、何%でしょうか。
舛添要一厚生労働相 いわゆる非正規労働者の人数は、平成十九年四月から六月の四半期の数字で千七百三十一万人です。この四月―六月の四半期の、一番最新の数字ですと33・2%。三人に一人が非正規労働者という比率です。
佐々木 今年は、一―三月期で33・7%、四―六月期で33・2%、こういうことです。大変高いわけです。つまり、三人に一人が非正規雇用である。若者の場合は二人に一人なんです。
それで、一生懸命働いても年収二百万円に満たない、そういう人々が「ワーキングプア」とか「働く貧困層」と言われているわけです。
全労働者の三分の一が非正規で働いている中で、特に派遣、契約社員、この所得の統計があると思うんですが、総務大臣にお聞きします。労働力調査で、派遣社員、契約社員、嘱託の場合、年収二百万円未満の人の割合はどうなっていますか。そのうち女性の場合はどうでしょうか。
増田寛也総務相 派遣社員に占める二百万円未満の者の割合、男女計で49・6%、それから、契約社員、嘱託に占める割合は男女計で44・8%です。
女性についての割合ですが、これは派遣社員に占める割合が56・6%、そして、契約社員、嘱託に占める割合ですが、こちらが58・9%です。
佐々木 つまり、ワーキングプアとも言われるような方々の比率が、派遣社員や契約社員に非常に高い。半分、あるいは、女性の場合は六割、こういう状況です。
先ほど見たように、大企業が大変な利益を上げる、その背景に、こういう低賃金の非正規雇用を増やしたり、正社員をリストラで減らす、そういうことをやってきた、そこに原因があるんじゃないですか。
この非正規雇用の比率がどんどん高まってくるということは、平均の賃金水準を全体として押し下げていく、そういう作用を果たすと思うんですが、そういう認識はおありですか。
首相 一般的にはそういうことが言えると思います。しかし、正規雇用も増えています。平均すると、そんなに下がっていないんじゃないかという感じはします。
佐々木 若干正規雇用も増えていますが、非正規雇用の増え方の方が多いんです。四―六月期でも、昨年比で二十九万人正規雇用が増えましたが、非正規雇用が八十四万人増えているんです。ですから、当然、全体の水準が低下していくわけです。
問題は、なぜそういうことが可能になったかです。
このパネル(グラフ)を見ていただきたいんですが、政府が労働法制の規制緩和をこの間次々に行ってきた、それが大変大きな要因になっていると思うんです。戦後は、仕事を紹介して賃金をピンハネするというような口入れ屋というのは中間搾取だということで禁止されました。職安法四四条は、直接雇用でなければならないと明記しました。
ところが、一九八五年、十六の専門業種に限定するという前提で、直接雇用ではなく労働者派遣というものを認めたわけです。それが最初です。九六年、その対象を十六から二十六専門業種に広げました。九九年になると、日本共産党だけが反対したんですが、それまでの二十六業種という限定を取り払って、派遣労働を原則自由というものにしてしまったわけです。二〇〇三年になると、製造業への派遣を解禁して、そして〇四年から実施する。
これらの一連の労働法制の規制緩和というものがなければ、現在のこれほど多くの低賃金の非正規労働者というのは発生しなかったと思うんですけれども、認識は。
厚労相 企業のニーズもあります。それからバブル崩壊後これが増えている。必ずしも労働法制が変わったときに有意義に変わったかどうか、もっと検証する必要があると思います。
ただ、三人に一人がフリーター、非正規というのを固定してはいけないと思います。
佐々木 今までできなかった分野、あるいは今までできなかった派遣が可能になったのは、法律が変わったからです。法改正がなければこれだけの非正規雇用は生まれないんです。
今、派遣労働者のなかで問題になっているのは、あらかじめ派遣会社に登録しておいて、派遣された期間だけ労働契約を締結するという「登録型派遣」です。これがあらゆる業種に広がっているわけです。
「登録型派遣」というのは、現在何人いますか。
厚労相 約百九十三万人です。
佐々木 「登録型派遣」の中でも、一日単位で派遣される「日雇い派遣」というのが大きな社会問題になっております。
登録した派遣会社から、朝早くメールで仕事内容と集合場所が送られてくる。一日働いても数千円、一カ月間必死に働いても十万円台という低賃金であります。こういう方々は、その日仕事がなかったり、あるいは体調を崩して休む。その場合は収入はもちろんゼロになるわけですね。アパートの家賃も払えなくなる。そうなると、ホームレスになったり、あるいはネットカフェなどで寝泊まりせざるを得ない。一度そうなると、なかなかこれは抜け出せないという状況であります。
元気な愛知といわれている愛知県でも、ネットカフェや漫画喫茶というものが増えております。トヨタ自動車などの関連企業が多い三河地方や、製造・流通企業の多い小牧市など、尾張中部にも増えております。どんな状況かといいますと、朝早く、トヨタ系の下請け会社が、バンでネットカフェを回って若者を迎えに来るというんですね。日雇い派遣、スポット派遣と言われる短期派遣労働者の宿舎代わりにこれが使われている。
私は労働者の話を聞きました。「青森から来たが、賃金が安く、アパートを借りるお金がない、通勤の交通費も大変なので仕事場近くのネットカフェに寝泊まりしている」。こういう状況をほっておいていいのかが問われています。
総理、住居のない人たちに、直ちに家賃補助とか生活資金を貸し付けるとか、せめて何らかの手を打たなければならないと思うんですがどうですか。
首相 そういう雇用が発生するということは、社会の価値観の多様性というか、また働き方の多様性とかいったようなこともあるわけです。どう対応していくか、いろいろな角度で施策を進めていく必要もあると思っています。
生活資金、貸付、そんなことをしたらどうかという話もありますが、すでに自治体で実施しているところもあると聞いています。資金を貸し付けるということになりますと、保証人の確保が難しいといったようなことがあると聞いております。
佐々木 総理は、働く人を大切にするということを所信表明で言われました。それから、正規雇用に転換するとも言われました。それなら、雇用の原則というものをもう一度考える必要があると思うんです。
期間の定めのない直接雇用を基本にする、そういう原則に立ち戻るべきだと思うんです。非人間的な日雇い派遣は禁止する、登録型派遣も原則禁止、こういう道に踏み出すべきだと思うんですけれども、どうですか。
厚労相 非正規の労働者にアンケートをやってみると、正社員になりたいというのは三割、今のままでいいというのが五割、今後も派遣労働者のままがいいというのも三割いて、なかなかニーズが一概に言えません。
ただ、日雇い派遣や登録派遣が今のままでいいのかというのは、先生のご指摘もございますので、九月から労働政策審議会で見直しの検討を開始させたところです。
佐々木 働いている人がそういうことを要求しているかのようなことを言いますけれども、とんでもない話です。誰もワーキングプアになりたい人はいませんよ。
内閣府の多様な働き方に関する意識調査によりますと、現在、そういう形で働いている二十代の男性のうち85%が十年後までに正社員として働きたいという調査もあるんじゃありませんか。
九月から検討しているといいますけれども、たとえば一般業務については登録型派遣は明確に禁止する、そういう方向で検討しているのかどうか、確認したい。
厚労相 審議会では、あらゆる角度から検討し、適切に、見直しも含めて検討する。その結果を踏まえて政府としてもきちんと対応していきたいと思っています。
佐々木 労働政策審議会の中で、登録型派遣を禁止する方向に抵抗している人は誰ですか。
厚労相 どの委員がどういう意見を言うかは、私はつまびらかにいたしません。
佐々木 私が聞いているのは、経営者側の委員であります。その言い分を見ますと、登録型派遣は現状でいいとか、あるいは対象業務は原則自由化なんだ、そういう勝手なことを言っているわけです。
日本経団連が発表した二〇〇七年の優先政策事項というのをここに持っておりますけれども、この中では、雇用・労働分野における規制改革をいっそう推進すると書かれております。経営者側の委員は、この立場に立って登録型派遣の原則禁止に真っ向から抵抗している。
日本経団連の御手洗(冨士夫)会長は、政府の政策を事実上決定する経済財政諮問会議の中で、財界、大企業の代表として発言しております。
違法な偽装請負を指摘されると、「法律に無理があるから変えろ」と、法律の方を変えろと言っているんです。
委員長、日本経団連の御手洗会長を参考人として呼んで、雇用政策についての考えをただしたいと思います。検討していただけますか。
逢沢一郎委員長 理事会で協議いたします。
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企業献金
佐々木 経団連の要望に沿うと自民への額が増えていく
首相 お願いしているわけでない
佐々木 政治ゆがめる。きっぱり禁止を
佐々木 日本経団連になかなか頭が上がらない状況があるのではないか。総理も何か奥歯に物がはさまったような言い方しかしないので、どうもその裏に、自民党が大企業から政治献金を受け取っているんじゃないかと思いますが、いかがですか。
首相 政治献金を受け取ったから、業界、団体に有利にしようと考えるほど、われわれは貧しくありません。
佐々木 影響を受けないと言われますけれども、二〇〇三年、旧経団連と日経連が合併して日本経団連がつくられる。その次の年から新しい方式で献金が行われるようになったんです。それまで十年間は経団連が集めて自民党に献金するようなことはやめておりました。しかし、〇四年になって、経団連が自民党と民主党に政策評価という通信簿をつけて、その点数を目安に大企業が献金を行う。
例えばこういう形になっておりまして(グラフ)、この通信簿はA、B、C、D、Eの五段階になっております。それは模範解答があって、日本経団連が発表する優先政策事項というものがあるんです。それに沿って政策を出せばよい点がとれる。
こういうやり方が私は非常に政治をゆがめていると思いますが、このやり方をもうそろそろやめるという決意は総理におありかどうか、最後にお聞きしたいと思います。
首相 経団連の評価について、どういう経緯でされているのかはわかりませんけれども、私どもからお願いしてやっていただいていることではないと思っております。
佐々木 企業・団体献金は政治全体をゆがめるものですから、きっぱりと禁止をする、このことを最後に主張して、質問を終わりたいと思います。
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