2007年10月12日(金)「しんぶん赤旗」

主張

「集団自決」検定

沖縄の心にこたえ撤回せよ


 日本共産党の赤嶺政賢衆院議員が沖縄戦「集団自決」教科書検定問題で、十一万人が結集した「県民大会」で示された沖縄の心を背に、「日本軍による強制」を削除させた検定意見の撤回と記述の回復を強く求めました。

 政府は「沖縄の思いを重くうけとめる」といいながら、検定を押し付けた文科省の責任を認めない不誠実な態度です。政府が誤りを認め、自らの責任でそれをたださなければ、問題の解決はありません。

突然の書き換え

 過去の戦争で、唯一、住民をまきこんでの地上戦が展開された沖縄の悲劇は、世代を超えて受け継がなければならない痛切な歴史の事実です。第二次世界大戦末期の沖縄戦は、すでに敗北が明らかだった日本軍による本土防衛のための「捨て石」作戦でした。日本軍は軍人も民間人も区別なく戦場動員し、米軍上陸前から住民に捕虜になることへの恐怖をうえつけ、「玉砕」を迫って、軍の手りゅう弾を「いざとなったら死ぬように」と配ったのです。「集団自決」にたいする「軍による強制」は消し去りようのない事実です。

 これまでの教科書には「日本軍に『集団自決』を強いられたり…」と記述がありました。沖縄県民からすれば穏やかにすぎる書き方ですが、歴史学の通説に沿うものであり、これまで二十年間の教科書検定でこれに意見がついたことはありません。

 ところが今年三月の教科書検定では、「沖縄戦の実態について誤解するおそれのある表現」という意見が突如としてつけられました。意見のついた七つの教科書すべてで「軍による強制」を削除する書き換えが行われたのです。

 沖縄戦での悲惨な「集団自決」強制を体験し、語り継いできた沖縄の人たちにとって身をちぎられるような歴史の歪曲(わいきょく)であり、絶対に許されるものではありません。

 県民大会の大きな盛り上がりとそれに参加した県民の思いをつきつけた赤嶺氏の追及で、この検定意見は、文科省の職員である教科書調査官の作成した「調査意見書」が発端であることが明らかになりました。意見書には局長らの決裁印が押されています。文字通り、文科省ぐるみの書き換え意見書が、教科書検定審議会に持ち込まれ、そのまま決定されたのです。

 審議会には、沖縄戦の専門家は一人もいません。「特段の議論はない」(文科省初等中等教育局長答弁)まま、学術的、中立・公正な検討を経たという装いが整えられました。いまになって、審議会委員からも、「もっと慎重であるべきだった」という反省がのべられています。

 渡海紀三朗文科相は、「私が(検定意見を)『撤回せよ』というのは政治介入になる」といいますが、文科省ぐるみの意見を審議会で通したこと自体が政治介入です。その撤回を求められて、「政治介入はできない」という言い分は通りません。不当な政治介入を撤回しなければ、沖縄の心を踏みにじった検定は、なんら是正されません。

真実の回復こそ

 赤嶺氏は、「検定の撤回を求めるのは政治の介入ではない。『真実を回復してほしい』という県民のやむにやまれぬ叫びだ」とのべました。まさに沖縄の声です。文科相の責任で検定意見を撤回し、記述を回復するための措置をとるべきです。

 福田康夫首相は、「沖縄の思いを重く受け止める」という自らの言葉を行動で示すべきです。


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