2007年10月9日(火)「しんぶん赤旗」

主張

財源問題

「二つの聖域」にメスを


 福田康夫首相の就任後、初の経済財政諮問会議が四日開かれました。

 参院選で与党が大敗し、突然政権を投げ出した安倍内閣の後を継いだ福田内閣が、国民の審判にどう向き合うのか国民は注目しています。

 諮問会議では、小泉内閣のときに決めた「歳出歳入一体改革」を「堅持する」など、御手洗冨士夫キヤノン会長(日本経団連会長)ら民間メンバーの提案を了承しました。

袋小路から抜けるには

 「骨太方針二〇〇六」に盛り込まれた小泉内閣の「歳出歳入改革」が、歳出の削減で最大の標的にしているのは社会保障費です。

 政府は高齢化などによる社会保障予算の自然増を〇二年度から毎年削ってきました。削減規模はすでに年間一・四兆円に達しています。一連の予算削減のための制度改悪は、もっとも支援を要する患者や高齢者を制度から排除し、「医療難民」「介護難民」を急増させています。「歳出歳入改革」は、さらに一一年度まで毎年二千二百億円もの社会保障の予算削減を続けようとしています。

 このやり方を改めなければ、福田首相が自民党総裁選で打ち出した「高齢者医療費負担増の凍結」や「障害者自立支援法の見直し」は、一時的な痛み止めに終わるか、社会保障のほかの分野で新たに痛みを強いるかの袋小路から出られません。

 実際に政府・与党が検討中の対策は、来年四月からの「後期高齢者医療制度」による高齢者の負担増について、七十五歳以上の被扶養者からの保険料徴収を半年ほど凍結するなど一時しのぎにとどまっています。

 福田首相は参院本会議で、後期高齢者医療制度の「理念・方向性は適切だ」と答弁しました。「理念・方向性」とは医療予算の増加を削ることであり、社会保障費の抑制路線にほかなりません。高齢者の不安に応えるには、この路線を改めることが不可欠です。そのためにも財源問題を避けて通るわけにはいきません。

 小泉「構造改革」の「歳出歳入改革」は、「歳入」では〇七年度をめどに「消費税を含む税体系の抜本的改革を実現する」としています。

 消費税は低所得者の生活費にも一律にかかり、所得が低い人ほど所得に対する負担割合が重くなる無慈悲で過酷な税制です。とりわけ国民の生存権を守る社会保障の財源としてもっともふさわしくない税制です。

 こんな消費税しか財源がないかのような議論になるのは、大企業・大資産家へのゆきすぎた減税と年間五兆円に上る軍事費の二つを「聖域」にしているからです。

 政府の統計でも、大企業の利益は一九九七年度からの九年間で十五・一兆円から三十二・八兆円へと二・二倍になりました。同じ時期に大企業が納めた税金は一割程度しか増えていません。法人税率を大幅に引き下げ、数々の特権的な優遇によって五兆円を超える減税をばらまいてきたためです。大資産家には証券優遇税制や所得税の引き下げで、二兆円を超える減税をやってきました。

消費税に頼ることなく

 軍事費ではイラクやアフガニスタンへの派兵に千六百五十億円の税金を費やし、米軍への「思いやり予算」は今年度も中小企業予算を上回る二千三百億円を投入しています。アメリカのグアム基地建設を含む米軍再編には、財源など問題にすることもなく三兆円の支出を決めました。

 この「二つの聖域」にメスを入れれば、消費税に頼ることなく財源をつくる道が開けます。財政・税制の根本的な転換が求められています。


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