2007年10月5日(金)「しんぶん赤旗」
児童医療援助の延長法案
米大統領が拒否権
議会は反発 「1000万人の子に保障与えず」
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【ワシントン=山崎伸治】ブッシュ米大統領は三日、低所得層の子どもを対象とした「州児童医療保険事業」(SCHIP)を延長する法案に拒否権を発動しました。これに対しては、議会の民主党だけでなく、共和党も反発しています。
SCHIPは、所得が低所得者医療扶助制度(メディケイド)の上限を超えた無保険の世帯の子どもが対象。現在六百六十万人が受給を受けています。今年九月末で期限切れとなるため、二〇一二年までの五年間延長する法案が議会で審議されていました。
議会が可決した法案は、同事業に三百五十億ドルを上乗せして総額六百億ドルに増額し、受給対象を約一千万人にまで拡大。財源としてタバコ税を一箱あたり六十一セントから一ドル引き上げます。
ブッシュ氏は同日午前、ペンシルベニア州ランカスターで演説し、「この事業の目的は貧しい子どもに重点を置くというもので、年収八万三千ドルまでの世帯を対象とするのではない」と述べ、中間層の子どもにまで対象が広がることに不満を表明しました。
民主党のペロシ下院議長は同日、声明を発表し、「大統領は拒否権を発動することで『一千万人の子どもに医療保障を与えない』と表明した」と批判。共和党のハッチ上院議員は同日、議会での記者会見で「この法案が適用される子どもの92%は、貧困ラインの二倍以下の収入の家庭だ」と大統領の主張に反論しました。
法案は先月、修正されて議決された際、上院では拒否権を覆すのに必要な三分の二の賛成で可決。しかし下院では可決されたものの、三分の二には二十五票及びませんでした。下院での再議決は十八日に予定されており、民主党は賛成した共和党議員の協力も得ながら、反対した共和党下院議員の切り崩しを狙っています。
米国の労働運動は拒否権発動を見越して、反対した共和党議員への働きかけをすでに開始するなど、法案の再議決に向けた運動に取り組んでいます。