2007年10月2日(火)「しんぶん赤旗」

主張

福田首相演説

信頼に応えるというのなら


 福田康夫首相の、初の所信表明演説を聞きました。参院選で敗北し、結局政権を投げ出した安倍晋三首相の後を受けての政権です。福田氏は政治空白への「おわび」と、野党との「話し合い」を目指すという態度表明から演説を始めました。

 約二十分間にわたった演説には、安倍首相が掲げつづけた「戦後レジーム(体制)の見直し」も「美しい国」のことばも出てきません。くりかえし登場したのが「国民の信頼を取り戻す」とか「国民的な合意を目指す」という言葉です。

政治資金の透明化を

 福田首相が「政治と行政にたいする国民の不信を率直に受け止めている」といい、「国民の信頼の回復」を語った中で、まず取り上げたのは「政治とカネ」の問題や公務員の倫理問題、行政の無駄遣いなどです。閣僚などの政治資金収支報告をめぐる虚偽報告や「消えた」年金問題が国民の不信を買い、参院選での自民党の敗北につながったことに照らせば当然のことでしょう。

 福田氏は自民党の総裁選中から、政治資金の透明化のために一円の支出から領収書を添付することなどを提唱してきました。公明党との政権合意ではその領収書を公開するかどうかの結論が出ておらず、所信表明演説では具体的な内容に触れませんでしたが、政治資金の透明化は、政治の国民への責任です。

 内政問題で首相が語ったのは、小泉、安倍内閣以来の「構造改革」を継承することです。しかし、同時に強調したのは、都市と地方、農業、青年の雇用など「いわゆる格差問題への対応」です。これまでの内閣とは違っていました。

 弱肉強食の「構造改革」路線のもとで、貧困と格差の拡大は、重大な社会問題になっています。格差問題を直視しなければならなくなったこと自体、小泉純一郎首相が、「痛みに耐えて明日をよくしよう」といって始めた「構造改革」路線の破たんを示すものです。しかし、福田氏がいうように「構造改革」は継続しながら、「格差問題」などに対応すれば、それで若者が希望を持ち、お年寄りが安心できる「希望と安心」の国はできるのか。首相の演説には、その道筋や手だてがありません。

 福田氏が「信頼の回復」を語った流れのなかで「歳出・歳入一体改革」を持ち出し、「消費税を含む税体系の抜本的改革」のために「国民の合意」をといったのも、そうした矛盾のあらわれです。確かに行政のムダや非効率は政治不信の背景の一つですが、大型公共事業や軍事費のムダ、大企業・大資産家優遇の税制にメスをいれず消費税の増税を国民に押し付けるというのは「信頼」の名に反します。弱肉強食の「構造改革」路線そのものの見直しに足を踏み出すことが必要です。

「靖国」派改憲の破たん

 福田首相が演説で、安倍首相が掲げた「戦後レジームの脱却」や「美しい国」を口にせず、憲法改定にも触れなかったのは、「靖国」派流の改憲路線がゆきづまったことを示しています。にもかかわらず、福田氏がアメリカの「報復戦争」を支援するための海上自衛隊の給油活動継続に固執しているのは、日米同盟堅持の立場から抜け出せていないことを浮き彫りにしています。

 戦争でテロはなくせず、むしろ拡散したというのが、「報復戦争」以来の世界の現実です。首相がこうした経験を生かすことこそ、国民の間でも、国際社会でも、信頼に応えることになります。


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