2007年10月1日(月)「しんぶん赤旗」
米上院が“イラク分割”決議
アラブ諸国、猛反発
【カイロ=松本眞志】米上院本会議がイラク政府の権限を民族・宗派ごとの地域に移譲する連邦制を求める決議案を採択(九月二十六日)した問題で、イラクのマリキ首相をはじめアラブ諸国は「イラク情勢をさらに困難にする」として、いっせいに反対を表明しました。
同決議案は民主党のバイデン外交委員長が提出したもので、イラク政府の権限を国境警備などに制限し、スンニ派地域への石油収入の配分や復興支援事業や負債軽減の促進などを定めています。法的拘束力はありません。
湾岸協力会議(GCC=バーレーン、クウェート、オマーン、サウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦で構成)のアティーヤ事務局長は二十八日、「(決議案は)困難なイラク情勢をさらに複雑化する」と指摘。「分割を呼びかけるのではなく、現在の状況をもたらした原因が、(米主導の)占領であり、法と治安の欠如、まひ状態にある政権運営であることを示すべきだ」と批判しました。イエメン外務省も同日、声明で、連邦案をイラクに対する「前例のないごう慢な干渉」と非難しました。
マリキ首相は二十七日、「(米上院は)イラクの統一と主権の強化を支援すべきであり、分割を提起するべきではない」と同決議案を批判。「連邦案はイラクのみならず域内に惨害をもたらす」として、イラク国民議会に対し公式な対応を協議するよう求めました。
アラブ連盟も同日、決議案がイラクを破壊し、国際テロ組織アルカイダの拠点に変えるものだと酷評しました。同連盟のイラク問題担当のガルシュ氏は「米国がイラクで実際にやったことは、イラクを破壊しアルカイダを引き寄せたことだ」と強調。「アラブ諸国がイラク国民と共同して同案に反対するべきだ」と訴えました。
上院決議案については、米超党派イラク研究グループ(ISG)も、「不安定な状態にあるイラクの治安部隊を崩壊に導く」と懸念を示しています。
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