2007年9月30日(日)「しんぶん赤旗」

主張

郵政民営化

小泉「改革」の痛み一段と


 小泉純一郎元首相が「改革の本丸だ」と言って強行した郵政民営化法によって、十月一日から郵政公社の分割・民営化がスタートします。

 郵政公社は、日本郵政株式会社の傘下に郵便局株式会社、郵便事業株式会社、株式会社ゆうちょ銀行、株式会社かんぽ生命保険の四社を置く巨大企業グループに変わります。

 政府は民営化しても「サービスは低下させない」と公約しました。しかし、すでに生活に密着したサービスの後退が始まっています。

国民への約束守れ

 窓口業務だけでなく郵便物の集配、貯金・保険の集金を担い、地域の拠点局の役割を果たしている集配郵便局の統廃合が進んでいます。郵政公社が民営化準備のリストラ策として、集配局の二割以上の千四十八局を無集配局に格下げしました。

 この結果、地域と集配局の距離が遠く離れ、遅配や誤配が増えるなど、最も基本的な郵便配達のサービスが後退しています。統廃合は過疎地に集中し、民営化の痛みを地方に押し付けています。

 公共施設や病院、学校などに設置されたATM(現金自動預払機)は、この三年間で六百台以上が撤去されました。郵貯の送金・決済サービスの手数料も、一万円以下の電信払い込みを二百十円から五百二十五円へ二・五倍にするなど、十月から大幅に値上げします。

 二年前、民営化法の国会審議の際に小泉首相や竹中平蔵郵政民営化担当相は、「万が一にも国民の利便に支障が生じないようにする」と繰り返し国民に約束しました。

 当時、政府に力を入れてほしい課題として郵政民営化をあげた人は、わずか6・7%(「読売」二〇〇五年一月調査)で、自治体首長の七割が民営化に不安を訴えていました。国会の参考人質疑では、「山村では郵便局は公共サービスの最後のとりで。市場原理に任せたら次々消えていく」(長野・泰阜(やすおか)村の松島貞治村長)と、民営化への批判と不安が噴き出していました。

 小泉首相ら政府・与党の約束は、国民の批判と不安への答えとして、極めて重い意味を持っています。その約束にふさわしく、サービス切り捨てを直ちにやめるべきです。

 郵政事業の民営化の狙いは、公共性を第一にする事業の運営から、利潤追求を第一にする経営に百八十度のかじを切ることにあります。

 民営化準備で一足早く設立された日本郵政株式会社が発表した方針によると、民営化後は「公的機関から民間企業へ、『自立に向けた企業変革の加速』がますます重要」としています。同時にこの方針は、ゆうちょ銀行、かんぽ生命、日本郵政の株式を民営化後三年目、遅くとも四年目には株式市場に上場するとのべています。かんぽ生命の経営理念には「株主への約束」まで掲げ、「株主の付託」に応えると明記しました。

民営化の見直しを

 公共性よりも利益と効率を優先する経営を格段に強め、これまで必要がなかった株主への配分を重視する姿勢です。利用者サービスをさらに切り捨て、株式の上場によって三百兆円に上る国民の資産を内外資本の利潤追求に提供する方向が、いっそう明らかになっています。

 郵政民営化には、国民に痛みを押し付けて大企業・大資産家に奉仕する「構造改革」の姿がくっきり表れています。参院選で「構造改革」に厳しい審判が下ったいま、その「本丸」とされた郵政民営化についても、根本から見直すことが必要です。



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