2007年9月25日(火)「しんぶん赤旗」

雨の町 見守り86年

尾鷲測候所、無人に

市議会は存続意見書

三重


地図

 全国屈指の多雨の町として知られる三重県尾鷲市の尾鷲測候所が、十月一日から無人化されます。八十六年間にわたり防災気象情報を発信し、住民の生命や財産を守ってきただけに、測候所の存続を求める声が上がっています。

 紀伊山地の東側、熊野灘に面する尾鷲市は三方を山に囲まれ、海からの湿った空気が山にぶつかって大粒の雨を降らせます。平年の年間降水量は約四○○○ミリと鹿児島県屋久島に次ぎ全国二番目。一九七一年の集中豪雨では二十六人の死者が出ました。

 尾鷲測候所は二一年、三重県津測候所尾鷲出張所として設立。以来、職員七人が二十四時間態勢で降水量や気温、風速の観測や津波監視などの業務をこなし、住民生活に欠かせない存在となっていました。セミの初鳴きやソメイヨシノの開花などの生物季節観測で四季の移ろいも知らせてきました。

 しかし、気象庁は自動観測システムの導入により、二○一○年度末までに全国九十六カ所すべての測候所を無人化する計画を進めており、尾鷲も自動化されることに。無人化後は「尾鷲特別地域気象観測所」となり、津地方気象台から三カ月に一回、機器点検などに職員が訪れるだけになります。

 市議会は六月、無人化反対し、存続を求める意見書を採択。気象庁に再考を訴えました。

来月から13カ所廃止・無人化

全気象労組が抗議

 気象庁が十月一日から廃止・無人化を決めている測候所は、三重県の尾鷲測候所のほか、北海道の江差、紋別、青森県の八戸、岩手県の宮古、千葉県の勝浦、新潟県の高田、相川、長野県の松本、兵庫県の豊岡、島根県の浜田、高知県の清水、鹿児島県の種子島の十三測候所。十三測候所のうち七測候所が、これまで地球規模での気候変動を監視・観測するという国際的に重要な役割をになってきました。

 十月から廃止・無人化される対象は、最寄りの地方気象台から遠く離れ、近年まで予報や注意報・警報を独自に発表していた相川、豊岡、種子島の三つの測候所や、三陸地方の地震、津波防災業務を支えてきた八戸、宮古の二測候所、流氷観測を行ってきた紋別測候所などが含まれています。一九九七年三月以降、すでに五十五カ所の測候所が廃止・無人化されました。

 十三測候所の廃止・無人化計画が発表されたことし六月、気象庁や全国の気象官署の職員で構成する全気象労働組合は、「測候所は地域の気象と自然環境を監視・観測する最前線」であり、「有人体制が決定的に重要である」と強調。「防災面での地方の切り捨て、都市部と地方間の格差拡大を一層推し進めるもの」と抗議する声明を発表し、「測候所の廃止計画の中止と整備拡充」を求めています。


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