2007年9月24日(月)「しんぶん赤旗」
列島だより
建物の高さ 住民運動で規制
住居地域で建物の高度(高さ)を規制する自治体が相次いでいます。日陰や圧迫・閉塞(へいそく)・不快感、風害など被害を近隣に与える高層建物の建築に反対する住民運動が自治体を動かしています。規制を七月に実施した岐阜県高山市と、規制案を住民に示した千葉県船橋市について紹介します。
岐阜・高山
観光、生活に悪影響
住居地域で19メートル以下に
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合併で日本一広い市となった岐阜県高山市は、古い町並み、高山祭りなどで有名です。小京都といわれ、毎年たくさんの観光客が訪れています。
強制力ある制度を
のどかな飛騨高山に近年、JR高山駅周辺を中心に中高層のマンションやホテルが建設されています。地元住民から、日陰、圧迫感、電波障害、また冬期間は日陰が凍結するなどの被害への不安や、「古都高山には高層建築物はあわない」などの景観悪化の心配の声が上がりました。そして、強制力のある制度の確立が求められました。
日本共産党市議団も「景観計画の高さ規制は、基準値を住民の合意で策定し、強制力のある制度の確立を」と繰り返し主張してきました。
市は七月に建築物の高さの最高限度として、駅周辺三十一メートル(十階程度)以下、駅東・駅西二十二メートル(七階程度)以下、住居地区は十九メートル(六階程度)以下、十六メートル(五階程度)以下、十三メートル(四階程度)以下の規制値を決めました。
日本共産党が住民とともに求めてきた強制力のある制度は確立されましたが、残念なことに、住民が求めていた駅周辺も二十二メートル以下は実現しませんでした。
学習会やビラ
日本共産党は、高層マンションの建設の計画が出たときに、住民とともにその反対運動に取り組んできました。京都から都市計画学の研究者を招いて、学習会も開きました。ビラを出したり、「高さ制限・街づくりアンケート」にも取り組み、高い建物を建築させない運動、世論を広げるために力を尽くしてきました。
こうした取り組みによって、計画を中止したものもありますが、十四階建てと九階建てのホテルは建築工事が進んでいます。
高山市の将来を住民とともに考え、十分に住民の声が取り入れられる住みよい街づくりへと、息の長い運動が必要だと思います。
(岐阜県高山市議・若山加代子)
日本共産党のアンケートから
日本共産党高山市委員会が実施している「高さ制限・街づくりアンケート」で寄せられている住民の声を紹介します。
「老人、子どもが行動しやすいように、と思うと、高い建物はないほうがよいと思います」(50代女性)
「家の南側に6階のビルが建てられ、10月から3月まで、太陽の光はまったくありません。一番ほしい冬季、自然光の恵みは永久にないわけです。見上げるたび地震におびえます」(70代男性)
「建物は低いほうが良い。冬季は凍るので、日差しは重大問題」(50代女性)
「何メートルとか決めたところで、景観が守れるとは思わない。昔ながらの町をつくりたいなら、ビルは建てないほうがよい」(20代女性)
建物の高度地区 都市計画法第9条で「用途地域内において市街地の環境を維持し、または土地利用の増進を図るため、建築物の高さの最高限度または最低限度を定める地区」として、自治体で高度地区を定めています。高度地区内の建物が示された高さを違反すると、自治体は是正措置命令をします。
千葉・船橋
意見聞き高度変更
マンション居住者とも懇談
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千葉県船橋市では、今年三月に建物の高度地区変更の方針(案)を発表しました。変更の理由を、「二階建て以下の住宅が90%を占める現状において、既成の住宅地で高層建築物が建築されると、眺望の減少や圧迫感の増加等、良好な住環境にさまざまな影響を及ぼす」からとのべています。その目的は「良好な住環境の維持・保全を図るため」としています。
パブリックコメント(意見公募)、議会での陳情審議などを参考にして高度地区変更原案をつくり、住民説明会を七月に開催しました。
敷地広ければ
これまでは、斜線制限(別項)はあるものの住居地域でも敷地が広ければ、高い建物の建築は可能でした。原案では、住居地域について二種類の規制をします。北部エリアを二十メートル(六階程度)以下、南部エリアを三十一メートル(十階程度)以下の規制をします。二十メートル以下は市内面積(八千五百六十四ヘクタール)の26%(二千二百六十二ヘクタール)、三十一メートル以下が11%(八百六十二ヘクタール)になります。
中山君雄都市計画部長は変更をめざして「法(都市計画法に基づく)手続きに入った」と話しています。公聴会や案の縦覧、都市計画審議会などを経て都市計画変更の告示をします。議会の議決を必要としません。
パブリックコメントでは、ごく一部に「規制の緩和を」との意見もありましたが、圧倒的多数が高さ規制に賛成していました。六月、九月の市議会で住民から「早期に実施を求める」陳情が出ています。いずれも採択されています。
原案で二十メートル以下の習志野台八丁目では、隣地境界から一メートル余りのところに約二十四メートル(八階建て)のマンションが完成間近です。千葉地裁へ、この建築の見直しを求めて申し立てをするなどの取り組みをしてきた住民は昨年十二月市議会へ、高さ規制を含む中高層建築にたいする拘束力のある指導を求める陳情を提出し、全会一致で採択をえました。
早く実施して
この取り組みをしてきた石川友英さん(38)は「原案は、圧迫感の対応では不十分だが、一歩前進。私たちの願いに応えようとしています。早く実施してほしい」と話しています。
日本共産党習志野台後援会では十六日に原案についての学習懇談会を開催しました。高層マンション建築の計画見直しを求めて活動してきた住民や、マンション居住者も出席し、考えあいました。原案では、マンションの建て替え時は現状の高さを認めているので「安心した」の声や、「街並みを崩さないようにするには原案の高さにしたほうがいいのではないか」などの意見が出ました。渡辺ゆう子市議は「安全で住みよい住環境にしていくためにつくします」と話していました。(栗山正隆)
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建物の高度斜線制限 建物の高さは地盤面からはかります。船橋市の第一種高度地区の場合、前面道路の反対側の境界線または隣地境界線までの真北方向の水平距離の一・二五倍に五メートルを加えたもの以下、当該水平距離から四メートルを減じたものの〇・六倍に十メートルを加えたもの以下としています。(船橋市都市計画部の説明書から)