2007年9月24日(月)「しんぶん赤旗」
ゆうPress
今なぜ スピリチュアル?
本紙100人アンケートから見えたもの
不安な心、行き場所探して
スピリチュアル・カウンセラーや占い師が、毎日のようにテレビに登場し、お茶の間で人気です。「スピリチュアル」とは「精神的、霊的」といった意味。ブームの背景を探りました。
平井真帆
この夏、東京で開催された大規模なイベント「癒しフェア」には、3万人もの人が訪れました。
「レイキヒーリングを受けていきませんか。15分で2千円です」。「店員」がにこやかに話し掛けてきます。「レイキヒーリングって何ですか?」、たずねてみると「神の恩恵で体を癒すんです」。そんな「スピリチュアル系」のショップが300以上、出展しています。
よく見ると、にぎやかで明るい雰囲気とは裏腹に、「前世で負った心の傷を癒す、癒しの前世占い」、「守護霊からのメッセージを占うスピリチュアルチャネリング」…。いたるところにそんな看板が。
★長い行列も
キラキラと光る銀色の布を頭から花嫁のようにまとった「オーラ占い師」の前には、ひときわ目立つ長い行列ができていました。占い師はお客を頭のてっぺんから足先まで凝視した後、おもむろに手招きし、「霊視」の結果をアドバイス。
神奈川県相模原市から来た女性は、オーラ写真をとり、人気占い師からアドバイスを受けました。「普段、思ってることをズバリ言われてびっくりした」と、興奮気味。占い師は「あなたは自分を過小評価し過ぎ。人生に物足りなさを感じている。やりたいことがほかにあるのでしょう」などと話したそうです。
女性は続けます。「やりたいことは山のようにあるんだけど、失敗するのが怖くてなかなか向き合えないんですよね」。では、自分に何が一番向いているのか、「『答えは自分の中にある』って言われちゃいそうで」、肝心なことは聞けなかったそうです。
オーラ写真をとり、7〜8分ほどの個人カウンセリングを受けて料金は3500円。「値段の価値はある。良心的だと思う」と女性。
★あればいい
一体、どれくらいの人がこうした「スピリチュアルの世界」を信じているのでしょうか。
本紙は、東京都や埼玉県の学園や街頭で、10代〜20代の青年100人に「スピリチュアルに関するアンケート調査」を実施しました。結果、「魂や霊魂」を信じる若者は6割に上りました。
「魂や霊魂があると思いますか」という問いに対して「ある」と答えた人は58%、「ない」と答えた人は21%でした。「前世や生まれ変わりを信じますか」という問いに「信じる」と回答した人は52%、「信じない」人は28%。「神様の存在を信じる」人も41%に上りました。
また、「一度死んだ人間が生き返ることがあると思いますか」という問いに対して、「生き返る、生き返ることもある」と答えた人は合わせて24%いました。
少なくない青年が前世や生まれ変わりが「あったらいいな」「あったら面白い」などと、明るくとらえていたのが印象的でした。
不安定雇用の増大、格差の広がりなど青年にとって先行きの見えない不安な日々。厳しい現実社会を生きていくために、心のよりどころを必死で求める若者たち。「スピリチュアル」は青年たちをどこへ導くのでしょうか。
(100人「アンケート調査」は編集局の若手記者有志が担当しました)
不幸を霊のせいにする便利さ
立命館大学国際平和ミュージアム館長
安斎 育郎さん
超自然現象などに詳しく、『騙される人 騙されない人』『だます心 だまされる心』などの著書がある、立命館大学国際平和ミュージアム館長・安斎育郎さんに聞きました。
「生き返り」は信じないが、「生まれ変わり」は信じたい。「科学」と「願望」を区別しているのでしょうね。「神様」も「願いをかなえてくれる存在」として「信じたい」気分があるのでしょう。
相変わらず「霊」は人気ですね。不幸を霊のせいにし、除霊して元気を取り戻す―そんな「便利さ」もあるのでしょう。スピリチュアル・カウンセラーの流行は「癒し」を求める心ゆえでしょうが、不幸の本当の原因を見据えずに、前世や神の言葉に事寄せていっときの心の安らぎを求めるような生き方は本質的解決とは無縁でしょう。
人々は昔から天地の神々に心寄せてきました。750年近くも前、親鸞聖人は『愚禿(ぐとく)悲嘆述懐和讃(ひたんじゅっかいわさん)』を書いて、人々が天神(てんじん)地祇(ちぎ)や卜占(ぼくせん)祭祀(さいし)に入れあげているありさまを深く嘆き、批判しました。
しかし、現代の心霊ブームはテレビ界が一部の視聴者のオカルト志向に迎合し、視聴率稼ぎのために「霊能者」という虚像をでっち上げ、そこに人間ドラマを重ね合わせてゴールデンアワーに放映することによって作られたものです。
人間が不幸に陥るのには3つの原因があります。(1)社会のありようにかかわる構造的な原因、(2)自分自身の生き方にかかわる原因、(3)災害や事故などの偶発的な原因です。まじめに生きようとしている人々にとって、(1)はとりわけ大切です。
不幸の原因を霊に事寄せて解釈するような非社会的な見方を脱し、不幸を生み出す社会のありようを変革する意志と行動を紡(つむ)ぎだす努力こそが重要です。
心霊に心寄せる人々には、解決の道が本当にスピリチュアル・カウンセラーの言葉を信じることなのか、それとも、さまざまな不幸を生み出す社会を変革の対象としてとらえ、自らも人々と手を携えて社会に働きかけることなのか、心通わせながら話し合うことが大切です。
不幸の原因を心霊のせいにするような非社会的な見方は、それらを生み出す悪政を免罪する道にも通じることを訴えかけることが重要でしょう。
「スピリチュアルに関するアンケート」
回答者は10代が59人、20代以上が41人
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お悩みHunter
税理士資格とる勉強続けるべきか悩んで
Q 税理士をめざしています。資格を取るために勉強しながら、知り合いの税理士事務所でアルバイトをしています。このまま勉強を続けていても税理士資格を取るのは厳しい感じです。もうすぐ30歳になるし、このまま勉強を続けるか、他の道を探すか、将来どうするべきか見通しが立ちません。(29歳 男性)
夢の原点を思い出して
A あなたはなぜ税理士をめざされたのですか? あなたはどんな夢をえがきながら、これまで資格を取るためにがんばってきたのですか? いまいちど、税理士をめざし始めたころのあなたを思い出してみてはどうでしょう。
どんな職業も専門職としてプロになるには、その職なりの努力と経験が必要です。人それぞれ、向き不向きはあるでしょうけれど、その人の熱意やその職を通して何をしたいのか、その思いの深さに勝るものはないと私は思います。
そして、だれでも、今のあなたのように、壁にぶつかったり、不安になったり、迷ったりすることがあります。それは、どんな天才と言われる人にも。
そんなときは、原点に立ち返り、夢をかなえようと決めたときの自分を思い出してみてほしいのです。
もちろん、そのときとは、環境も状況も見えていた視野も違うと思います。しかし、あなたにとって大切な心の宝物がきっとそこにはあったはずです。
もしそれが、税理士という仕事でなくても、別の仕事を通して、あなたの夢がかなうならば、少し方向転換をすればいいのではないでしょうか。
年齢や見通しではなく、あなたがどのような志を持ち、なにをしたいか、そこに立ち返ることが大切だと私は思います。
舞台女優 有馬 理恵さん
「肝っ玉お母とその子供達」など多くの作品に出演。水上勉作「釈迦内柩唄」はライフワーク。日本平和委員会理事。