2007年9月21日(金)「しんぶん赤旗」
原爆症新基準示す
日本被団協 実現へ百万人署名
日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)は二十日、東京都内で記者会見し、「原爆症認定制度の見直しにあたっての要求」をまとめたことを発表しました。要求は、安倍晋三首相が厚生労働大臣に認定制度のあり方を見直すよう指示したことを受けたもので、九つの「原爆症認定疾病」を政令で定めることを柱とした新しい認定基準を示しました。具体的な疾病名をあげて認定制度の見直しを迫ったのは初めてです。
「原爆症認定制度の見直しにあたっての要求」は▽六つの判決に対する控訴を取り下げ、すべての訴訟を解決する▽現在の「審査の方針」を廃止する▽新しい「認定基準」に基づく制度に改め、原爆手帳所持者が政令で定めた「原爆症認定疾病」にかかった場合は医療分科会の審査を経ずに認定する▽医療分科会を改革する―を求めています。
会見で田中熙巳事務局長は、厚生労働省の「原爆症認定の在り方に関する検討会」や与党プロジェクトチームが年内をめどに見直しの提言をまとめる予定であることにふれ、「この要求を実現させるために厚労省や政党に働きかけていきたい」と表明。二十八日開催の検討会での日本被団協代表からの意見聴取で、原爆被害の実相を訴えていきたいと語りました。
年内には長崎地裁や大阪高裁で判決が予想されることから、「十二月上旬が大きなヤマ場になる」として、首相と厚労大臣に認定制度の抜本改定を求める「緊急百万人署名」を全国によびかけたと紹介。十二月四日には九段会館(東京都千代田区)で全国規模の大集会を開催すると発表し、国会議員や地方議会にも引き続き働きかけを強めていくとのべました。
山本英典事務局次長は、見直しに原告の意見を反映させようと全国原告団を十三日に発足させ、山本氏が原告団長に就いたと紹介しました。
各政党に要請
日本被団協は同日、「見直しにあたっての要求」について、厚労省と、共産、自民、公明、民主の各党に要請しました。
日本共産党への要請では、党被爆者問題対策委員会の小池晃責任者・参院議員、笠井亮衆院議員、井上哲士参院議員が参加しました。
田中事務局長が要求の中身を説明し、協力を求めました。
小池氏は、「基準を見直すといいながら直後に控訴する国の姿勢は被爆者を愚弄(ぐろう)するものであり非常に怒りを持っている。この要求は、この間のみなさんのたたかいと六つの判決を踏まえた当然の要求であり、厚労省が要求を受け入れるよう迫っていきたい。国会論戦でも重視し、この要求を論戦の土台にしたい」と応じました。
日本被団協要求骨子
日本被団協の要求の骨子は次の通りです。
1 控訴を取り下げ、すべての訴訟を解決すること。
2 原爆症認定の基準となっている「審査の方針」を廃止すること。
3 新しい「認定基準」による認定制度をつくること。
(1)一般に放射線によるものと肯定できる病気やけがは「原爆症認定疾病」とし、医療が必要な状態にある場合には、医療分科会(疾病・障害認定審査会原子爆弾被爆者医療分科会)の審査を経ることなく、厚生労働大臣は原爆症と認定すること。
(2)「原爆症認定疾病」を政令で定めること。
(3)政令で定める「原爆症認定疾病」は以下の通り。▽すべての部位の固形がん、白血病、悪性リンパ腫、造血臓器悪性腫瘍(しゅよう)▽原因不明の白血球減少症、難治性の貧血などの血液疾患▽B型、C型のウイルス性肝疾患を含む慢性肝障害(慢性肝炎、肝硬変)▽白内障▽心筋梗塞(こうそく)、冠動脈硬化が認められる狭心症▽肺繊維症▽甲状腺機能低下症や副甲状腺機能亢(こう)進症(高カルシウム血症)▽熱傷や外傷の重度の後遺▽胎内被爆者の小頭症
(4)「原爆症認定疾病」は医学的知見の進展に伴い随時付加する。
(5)政令に定めがないが、放射線によるものと否定できない疾病にかかり、医療が必要な場合は分科会の審査を経て厚生労働大臣が原爆症と認めること。認定に当たっては被爆者援護法の趣旨と集団訴訟判決の判断基準を踏まえること。
4 医療分科会は放射線の人体への影響についての知識と被爆者医療に経験のある委員で構成し、委員の半数は被爆者団体推薦とすること。