2007年9月20日(木)「しんぶん赤旗」
FOXテレビが検閲
エミー賞授賞式
反戦メッセージの放送を編集カット
【ワシントン=鎌塚由美】米国で十六日、テレビ番組の業績をたたえるエミー賞の授賞式で、ドラマ主演女優賞を受賞したサリー・フィールドさんの言葉が、FOXテレビの中継から一部カットされました。FOXテレビによる不適切な検閲だという批判があがっています。
映画「ノーマ・レイ」(一九七九年)などでアカデミー賞を受賞している女優のサリー・フィールドさん(60)は、現在出演中のテレビドラマ「ブラザーズ・アンド・シスターズ」の母親役でエミー賞を受賞。同作品では、アフガニスタン戦争で心的外傷後ストレス障害(PTSD)になって帰ってきた息子を、再びイラクに送り出す母親を演じています。
サリー・フィールドさんは受賞のスピーチで、戦場に子どもを送り出す母親たちの苦悩に言及。「もし母親たちが世界を統治したなら、くそいまいましい戦争なんてそもそも起こりはしない」と発言しました。
米国では「くそいまいましい」(ゴッドダムド)はののしり言葉の放送禁止用語。中継では、それに続く発言がカットされました。同中継は、数秒の時差のある「生放送」でした。
検閲を知ったフィールドさんは米メディアに対して、「世界の母親たちに敬意を表したかっただけ。彼女たちの働きを知らしめ、評価したかった」と説明。「ゴッドと前につけなければよかったのでしょうけどね」と語りました。
インターネット上では十七日、フィールドさんの発言について「FOXの検閲は正当化できるか」と投票が行われ、「正当化できない」(59%)が「正当化できる」(41%)を上る結果が出ました(同日夜の数字)。
ワシントン・ポスト紙(十七日付)は、ブッシュ政権下で連邦通信委員会(FCC)が検閲を強化していることを指摘、放送局や役者に多額の罰金が課せられるようになっていることが紹介されています。コラムニストのトム・シャレス氏は、「FOXテレビがフィールドさんの言葉を政治的理由で検閲したのなら、エミー賞の歴史のなかで醜い初めての出来事となるだろう」と述べました。
同様にエミー賞を中継したカナダのテレビ局では、フィールドさんの発言への検閲はありませんでした。