2007年9月19日(水)「しんぶん赤旗」
“あるじ”不在で官邸機能不全
肝いり会合 中止・延期
安倍晋三首相が、臨時国会での代表質問直前に政権を投げ出してから一週間。首相は辞意表明後、機能性胃腸症と診断され、いまも都内の病院に入院中です。官邸は“あるじ”不在で機能不全に陥り、首相肝いりの会議や懇談会なども中止や延期が相次いでいます。
■閣議開かれず
首相の入院は当初三、四日とされ、十八日の閣議には出席すると見られていました。しかし、「容体に変化がない」(担当医)として入院が延び、十八日の閣議は閣僚懇談会に切り替えられました。体調が回復せず、テレビや新聞にもほとんど接することができない状況だと伝えられる首相が、閣議案件を入院先の病院で決裁しているという異例の事態です。
内閣法第九条では、首相に事故のあるときや首相が欠けたときは、あらかじめ首相が指定する国務大臣が、首相の代わりに職務を行うことを定めています。しかし、与謝野馨官房長官は「現在の状況は、まだ内閣法の総理大臣に事故あるとき、欠けたときというケースには当たらないと判断している」(十八日)と述べ、臨時代理は置かれていません。
内閣府では、今月三十日に、タウンミーティングを衣替えした「政策ライブトーク」の第二回が、さいたま市で予定されていましたが、先週金曜に延期を決定。担当者は連休明けの十八日から参加者への連絡に追われました。
今後の開催予定について担当者は、「新しい内閣が発足してから大臣の日程調整を行い、参加者も改めて募集するので、早くても十月下旬となるのではないか」と語りました。
■教育再生会議
安倍首相主導でできた教育再生会議も激震に見舞われています。同会議が、参院選後初の合同分科会を開こうとしていた、まさにその日に、首相が辞意表明。会議では、年内にまとめる予定だった第三次報告に向けて、今後の議論の優先順位を話し合う予定でしたが、できませんでした。
「一カ月近く動けないし、今後のことは、新内閣が決まるまでは、なんともいえない」と事務方は当惑気味です。第三次報告を年内に出すことも「どうなるか分からない」。今後の日程も白紙です。
しかし、安倍内閣のもとで教育基本法は改悪され、教育再生会議の二次にわたる報告を受けて、教員免許更新制度、全国学力テストなどがすでに導入されています。さらに現在、中央教育審議会で、授業時間の一割増、道徳の教科化など、教育再生会議の提言が具体化されようとしています。
今後の検討課題だった、教育バウチャー制度、学校の統廃合、六・三・三制の見直しなどは、安倍内閣以前からある流れであり、安倍退陣後も、国民的監視は欠かせません。
■自衛権議論も
集団的自衛権の行使を検討する安倍首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長・柳井俊二前駐米大使)は十四日の第六回会合を中止しました。
懇談会は憲法上、禁じられている集団的自衛権を限定的に行使することで憲法改悪の道筋をつくるとともに、首相の政策判断で憲法解釈の変更を可能にすることが狙いでした。参院選大敗で政府解釈の変更は困難になりましたが、報告書については「粛々と作業を進めていく」(懇談会関係者)計画でした。
しかし、首相の突然の辞意表明で報告書の作成すら不透明な状況になりました。懇談会の存続は新首相が判断します。
米大統領を補佐する国家安全保障会議(NSC)をモデルとした日本版NSCも行き詰まっています。政府は四月にNSC法案を提出しましたが、通常国会では審議されないまま継続扱いに。臨時国会でも審議するめどは立っていません。
また、安全保障担当補佐官だった小池百合子氏が防衛相に転出して以降は官邸に同様のポストは置かれていません。