2007年9月16日(日)「しんぶん赤旗」
主張
ブッシュ演説
イラク撤退を引き延ばすな
ブッシュ米大統領が国民向けに、米軍の長期駐留を柱にしたイラク政策を示しました。同時に米政府はイラク作戦の効果についての報告書を米議会に提出しました。
ブッシュ大統領は、クリスマスまでの五千七百人規模の部隊の削減と来年七月までに二万―三万人といわれる五個戦闘旅団の削減を示したものの、十三万人もの米軍の撤退については事実上拒否しました。米議会をはじめアメリカ国内からも厳しい批判が広がっているのは当然です。
長期駐留への固執
ブッシュ政権はイラク政策の行き詰まりを打開するために、一月から三万人余りの米軍を追加投入してきました。今回の政策はイラク駐留米軍を追加投入前の十三万人規模に戻すだけのことです。国際社会が求めている削減要求にこたえたものではありません。十三万人規模から削減することについては、「成功に応じた帰還」というだけです。米軍が駐留し軍事支配を続けるから、イラク国民が反発をつよめ武力抵抗が続いているのです。「成功」などあるわけがなく、結局は、長期駐留を正当化する理屈にすぎません。
もともと三万人を追加投入し、イラク軍を鼓舞激励すれば「われわれの軍隊が帰国を始める日を早めることができる」というのがブッシュ大統領のうたい文句でした(一月の演説)。十三万人を維持し続けるというのは、追加投入政策の失敗を大統領みずから認めたのと同じです。
イラクの治安が「改善している」との説明にも、米議会内からだけでなく、イラク情勢をよく知っているアラブ諸国のメディアなどからも「事実とかけ離れている」との痛烈な指摘がなされています。
治安の「改善」の「よい例」としてブッシュ大統領があげたのは、三日に電撃訪問したアンバル州です。海兵隊四千人を増派し、軍事作戦を強化したものの、演説直前に、米軍に協力したイスラム教スンニ派部族長が爆弾テロで殺害される事態にもなりました。「成果」を演出しても治安改善はできていないのです。
バグダッドや周辺地域では事態はますます悪化しています。米軍の警備がきびしいという中心部でも砲撃がくりかえされ、中部地域では米軍が空爆で子どもたちの命を奪っています。暴力が原因で死亡した住民が七月は約千六百人、八月はそれを上回る千七百人以上にもなっています。
宗派間対立が「低下」しているとの説明も、「増加」と指摘している米議会政府監査院報告とも大きく食い違っています。
日本のNHK、イギリスのBBC、アメリカのABCがイラク全土で二千二百人を対象に行った世論調査によると、イラクの人々の72%が、米軍駐留が「治安を悪化させた」と回答し、79%が米軍と外国軍の駐留に反対すると回答しています。即時撤退も47%にのぼります。
イラクの多くの人々が米軍と多国籍軍の駐留に反対し撤退を求めています。ブッシュ大統領はあれこれいわずに、撤退にふみだすべきです。
自衛隊は即時撤退を
アメリカのイラク侵略とその後の軍事支配は、イラク国民の平和的生存権を奪うだけでなく、国際平和をも脅かしています。戦争のない世界を求める国連憲章の平和のしくみをも台なしにしつつあります。
イラクに居座り続ける米軍を、戦争を放棄した日本が支援するのは間違いです。自衛隊は即時撤退し、非軍事・外交的支援の道に方向転換すべきです。
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