2007年9月14日(金)「しんぶん赤旗」

湾岸諸国・アジアで変化

米依存脱却を模索

英 国際戦略研究所の報告


 【ロンドン=岡崎衆史】英国の有力シンクタンク、国際戦略研究所(IISS)は十二日、年次報告「二〇〇七年版戦略概観」を発表しました。同報告は、イラク戦略の破たんで米国の国際的地位が失墜するなか、湾岸諸国やアジアで、米国にのみ頼らない外交関係や安全保障の仕組みづくりの模索が進むなど、世界政治に変化が起きていると分析しました。


 報告は、「イラク侵略以来米国の著しい権威の失墜の影響が世界で感じられている」と指摘。特に、湾岸諸国が「主要同盟国であり、安全の保証人である米国の明瞭(めいりょう)な弱体化とイランの台頭に直面」し、「将来の自衛策を講じている」と述べ、例として、サウジアラビアが中国とロシアとの関係強化に動いていることを挙げました。

 また、東アジア、東南アジアについて、米国との関係を重視しながらも、「新たな安全保障関係や地域メカニズムを追求しつつあり、それには、米国が含まれないものもある」と述べ、注目しました。

 報告は、米国のイラク戦略について「これまでのすべてが間違った仮定に基づいており、成功を勝ち得ないのはあまりにも明瞭となった」と述べ破たんを強調しました。

 アフガニスタンについても「成功するかどうかで悲観的な見方が広がっている」「自爆攻撃が急増し、武装勢力や過激主義が、これまで平和的だった地域に広がっている」として、情勢の悪化を指摘。また、民間人死者を増大させる米軍の作戦は「逆効果だ」と、欧州諸国は「遺憾に思ってきた」と述べ、同盟諸国の間でも、米軍の軍事作戦に反発が広がっていることを記しました。

 一方、戦略概観は、地球温暖化を「国家と集団安全保障の中心問題」として取り上げました。気候変動がもたらす問題として、資源減少や経済悪化、紛争激化、貧富の差拡大などを挙げ、温暖化防止のための対策を急ぐよう訴えました。


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