2007年9月12日(水)「しんぶん赤旗」

ホワイトカラー・エグゼンプション

家庭だんらん法に

厚労相、言い換え指示


 舛添要一厚生労働相は十一日の閣議後記者会見で、一定の事務職を割増賃金の支払い対象から外す「日本版ホワイトカラー・エグゼンプション制度(WE)」について、「名前を『家庭だんらん法』にしろと言ってある」と言い換えを指示したことを明らかにしました。「残業代が出なければ、早く帰る動機付けになる」などとのべ、労働者が残業代ほしさから残業をしているかのようにのべました。


 WEは厚労省が先の通常国会での法制化を目指していましたが、国民から「長時間労働を野放しにする」「残業代がゼロになる」と批判を浴び、法案提出の断念に追い込まれました。

 同相はまた、「(長時間考えて発想するような)プランニングのような仕事は、時間給でやっても仕方ない」とする一方、時間で計れる仕事には残業代を支払うべきだとの認識を示しました。


呼び名変えても本質同じ

残業代なし 長時間労働野放し

解説

 ホワイトカラー・エグゼンプションはこれまで、「自己管理型労働」「自由度の高い働き方」などと呼び名をころころ変えては、導入がたくらまれてきました。しかし、呼び名をどう変えようとも長時間労働を野放しにする本質は変わりません。

 エグゼンプションが導入されれば、対象となるサラリーマンは一日八時間・週四十時間の労働時間規制から外され、ノルマや目標達成のために、残業代もなく何時間でも働くことを迫られます。これを「家庭だんらん法」などというのは、国民をあざむくものです。

 しかも企業は、労働時間管理に責任を負わなくなるので、サービス残業をさせたと追及されることもなくなり、労働者が過労死しても責任を問われることもなくなります。こんな都合のいい制度はありません。

 経団連が求めている年収四百万円以上の労働者に導入すると、千十三万人が対象者とされ、一人あたり百十四万円、総額十一・六兆円もの残業代が横取りされてしまいます(労働総研の試算)。

 だからこそ労働者・労働組合はもちろんマスコミも「長時間労働を助長する」「サービス残業を合法化する」とこぞって反対し、政府は法案の提出さえできずに断念に追い込まれたのです。性懲りもなく再び持ち出すことは許されません。

 舛添氏は「残業代が出ないと早く帰る」といって、労働者が残業代ほしさから残業をしているかのようにいいますが、早く帰れないのは、まともな時間に帰れるような仕事量になっておらず、いくら働いても仕事が終わらないからです。厚生労働相としての見識が問われる暴言です。

 プランニング(企画立案)のような仕事を例に「時間給ではかるべきではない」といっているのもごまかしです。

 財界も厚労省も労働時間規制を外す基準に持ち出しているのは「年収」や「地位」であり、仕事に関係なく時間管理の対象外にしてしまおうとしているのが実態です。

 しかも、企画立案のような仕事には、「裁量労働制」など労働時間規制を緩和する制度がすでに導入されており、新たにホワイトカラー・エグゼンプションのように広範な労働者を時間管理の対象外にしなければならない理由はありません。

 先の参院選挙で、国民は、「労働ビッグバン」と称して労働法制の規制緩和をすすめる自公政治に厳しい審判を下しました。それに反省もせず、「構造改革」路線に固執するのなら国民の批判は避けられません。(深山直人)



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