2007年9月8日(土)「しんぶん赤旗」

主張

子ども医療費の減免

国の「制裁」は直ちにやめよ


 子どもの医療費の窓口負担を減免している市区町村にたいし、国が「国保補助金の減額調整」の名でおこなっている「ペナルティー(制裁)」が、六年間(二〇〇〇年度から〇五年度まで)で約三百八十一億円にのぼることが厚生労働省のまとめで明らかになりました。

 自治体の医療費助成の独自施策にたいする国の補助金削減の「制裁」は、住民福祉にも、地方自治の立場にも反し、また「貧困と格差」拡大のなかで少子化問題を解決する方向にも、逆行するものです。

二重、三重に理屈通らぬ

 年々増大する医療費の負担を軽減するため、子どもの医療費無料化を国の制度として確立することは、父母と国民の強い願いです。しかし、現行の国の制度では、三歳未満の乳幼児の患者負担を二割に軽減(来年度から「就学前児童」に拡大)するにとどまっています。

 そのため全国のすべての都道府県、市区町村では、子育て世帯の負担を軽減するために、独自にさまざまな上乗せの助成をおこなっています。子どもの対象年齢を当初の「乳幼児」から拡大する自治体も増え、東京都では十月から対象を中学卒業までに拡大することを決めています。

 子どもの医療費助成は、子育てや孫育て中の人々への支援であるだけでなく、少子化対策としても重要です。内閣府の「子育て女性の意識調査」では、少子化対策として望ましい支援措置として、保育料などの軽減とともに、子どもの医療費助成があげられています。

 こうした父母と住民の強い願いに支えられて発展している自治体の助成制度にたいし、補助金削減の「制裁」を強行する理由として国は、「自治体の窓口減免は、患者数を増やし医療費増になる。助成実施の自治体と、そうでない自治体との公平性をはかるための補助金の減額調整だ」などと述べています。

 しかし、こうした理由は、二重、三重に、道理のないものです。

 第一に、国の制度の遅れを是正するのでなく、緊急措置として地方自治体が独自に実施している制度を「制裁」するのは、住民福祉、地方自治に真っ向から反します。

 第二に、自治体間の公平性をいうなら、国として全国共通の子ども医療費の助成制度を、早急に確立することこそ求められていることです。

 第三に、「患者数を増やし、医療費増になる」という言い分もあたりません。長期的に見れば、医療から国民を遠ざけることこそ子どもの病気悪化・医療費増の悪循環を生むことになります。

願い実現の条件広がる

 日本共産党は安心して病院にかかれるように、三十五年前から乳幼児医療費の無料化を国の制度とすることを求めてきました。就学前の子どもの医療費をすべて無料化する制度なら、約千九百億円の国の支出で実現できるという道筋も示しています。

 国の全国共通の制度が実現されれば、いま自治体が独自でおこなっている助成の費用を国の制度に上乗せして、対象年齢をさらにひろげることも可能となります。

 参院で与野党の議席が逆転した結果、国民の願いを実現する新たな政治的条件が生まれています。子ども医療費無料化を国の制度にすることには、参議院選挙の各党アンケートで、他の野党も賛成する回答をしています。子ども医療費の自治体の助成制度への国の「制裁」を直ちにやめるとともに、一日も早い国としての制度確立が求められます。



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