2007年9月7日(金)「しんぶん赤旗」

主張

鴨下環境相

訂正で“不問”は通用しない


 安倍改造内閣の「政治とカネ」の疑惑に歯止めがかかりません。鴨下一郎環境相の資金管理団体の借入金をめぐる政治資金収支報告書の虚偽報告、上川陽子少子化相の報告書「訂正」が相次ぎました。

 鴨下氏は、大臣としての公務をキャンセルし、火消しに躍起になりましたが、結局、わずか二十分間の立ち話の記者会見をしただけでまともな説明をせず、「単純なミス」と強弁し、訂正しただけで居座りを図っています。安倍晋三首相も鴨下氏をかばい、更迭する考えはないことを明らかにしました。安倍内閣の無責任の連鎖はいよいよ底無しです。

お手盛りの二重基準

 鴨下氏や安倍首相は今回の問題を、悪意のないミスだから訂正の措置をとればそれでいいと主張したいようです。しかし、訂正の措置をとっても免罪されるわけではありません。

 鴨下氏の資金管理団体が鴨下氏本人から借り入れたと政治資金収支報告書で報告した金額と、鴨下氏の説明を比べただけでも、八百万円もの食い違いがあります。これほどの巨額の金額が「単純なミス」で見過ごされ、十年間にもわたって誤った報告が繰り返されてきたというのは、社会通念上も通用する話ではありません。収支報告書の虚偽報告は明白な犯罪です。

 しかも、金の流れを証明する資料は「保存義務がない」から「無い」というのです。借用書もかわさず、数千万円もの金をやり取りするという鴨下氏の金銭感覚そのものを疑わざるをえません。

 国会に提出する資産等報告書の問題もあります。政治家が在任中に不明朗な資産づくりをしていないか監視するために公開するものです。鴨下氏は、資金管理団体への貸付金をまったく記載していませんでした。これも過去にさかのぼって訂正しなければならなくなります。

 「ウソはウソを呼ぶ」といいますが、話のつじつまを合わせようとすると、鴨下氏の過去の報告は、なにからなにまででたらめだったということになってしまいます。

 安倍首相が鴨下氏の虚偽報告を不問にしようというのは、内閣改造からわずか八日で辞任した遠藤武彦前農水相に続き、ここで鴨下氏も更迭となれば、内閣そのものがもたないからということでしょう。しかし、それは国民には通用しません。

 安倍内閣が編み出した、閣僚の政治資金をめぐる疑惑を「故意による悪質なもの」と「事務的なミス」に分け、故意なら辞任させるが、ミスなら訂正ですませるという基準は、責任逃れのためのお手盛りの「二重基準」です。

 悪い事をして、それがばれても、「事務的なミス」だと主張さえすれば許されるというのでは、法治国家は成り立ちません。法に違反する虚偽報告にはそれにふさわしい責任追及が不可欠です。

政権そのものが失格

 政治資金規正法の根本精神は、「政治とカネ」の問題を「国民の不断の監視と批判の下に」おくことにあります。ガラス張りでなければならない政治資金について、虚偽の報告をし、ずさんな処理を行うようでは政治家失格です。まして、閣僚にとどまることなど許されません。

 首相が内閣改造時にのべた「十分な説明ができなければ去っていただく」という言葉は、いまや完全に反故(ほご)にされようとしています。政治倫理より政権維持の思惑を優先する安倍内閣は、政権の資格そのものが「失格」です。


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