2007年9月6日(木)「しんぶん赤旗」
主張
来年度予算編成
改革とは無縁の財界いいなり
来年度予算の編成作業が本格化しています。
出そろった各省庁の予算・税制の要求は、庶民に負担を押し付ける政治に怒りの民意を表した参院選での審判に、安倍内閣が何ら反省していないことを改めて示しています。
社会保障を大幅削減
安倍内閣は小泉内閣が決めた「歳出歳入改革」を踏襲し、高齢化に伴う社会保障費の増加を機械的に二千二百億円も削減する概算要求基準(シーリング)を決めています。厚労省の概算要求は社会保障費をシーリングの枠内に収めましたが、予算削減の方策は「引き続き検討する」としています。国民のくらしへの影響にかかわりなく、“はじめに削減ありき”の冷たいやり方です。
社会保障では生活保護の母子加算の段階的廃止を継続すると同時に、低所得の母子家庭に支給される児童扶養手当の「一部支給停止」を予算編成の中で検討するとしています。支給停止は「一部」どころか、最大で半減となる大幅削減です。
児童扶養手当について厚労省は「一部支給停止をストップしたら(「福祉から雇用へ」の政策転換の)努力が大きく影響を受ける」(柳沢伯夫前大臣)と説明しています。
母子家庭の命綱となっている生活支援をカットして、“兵糧攻め”にする卑劣なやり方は許せません。
実際に生活保護行政が、弱い立場に立たされた国民を死に追いやる事件が相次いでいます。血も涙もない政治の根源には、「福祉から雇用へ」を口実に、予算削減を優先させて社会保障を切り捨てる本末転倒の「構造改革」路線があります。
厚労省は税制要望で、基礎年金の国庫負担引き上げを理由に「安定した財源を確保する税制上の整備」を求めました。舛添要一厚労相は「消費税が個人的にはいいと思う」とのべています。消費税増税に固執する発言が額賀福志郎財務相、与謝野馨官房長官らからも出ています。
小泉前政権が定率減税廃止の口実にした基礎年金の財源を、今度は安倍内閣が消費税増税の口実にしようとしています。消費税は生活保護受給者やフリーターにも容赦なく課税され、大金持ちほど負担が軽い“貧困と格差拡大の税制”であり、社会保障の財源には最もふさわしくない福祉破壊税です。年金を口実にした消費税増税の議論には道理がありません。
国庫負担の引き上げは、六兆円近い道路特定財源の一般財源化など歳出の見直しですみやかに実行すべきです。軍事費や無駄な大型公共事業にメスを入れれば、相当な財源が確保できます。しかし安倍内閣は、自動車業界などの要求にしたがって道路特定財源の“現状維持”を図っています。米軍基地強化の予算を特別扱いし、中小企業予算を上回る米軍への「思いやり予算」を続け、財界の利権を保証する大型公共事業の予算を増やそうとしています。
異常な税財政正して
経済産業省は大企業向けの研究開発減税のいっそうの拡充、法人実効税率引き下げの検討を掲げています。金融庁は上場株式の配当にかかる税金を、わずか10%に減税する優遇税制の恒久化などを求めました。
概算要求・税制要望には財界いいなり、大企業・大資産家の利益第一で家計を痛めつける「構造改革」路線の逆立ちした姿勢が、くっきりと浮かび上がっています。
いま求められているのは、国民の切実なくらしを守りながら、異常な財政と税制のあり方を根本から正す改革にほかなりません。