2007年9月5日(水)「しんぶん赤旗」

主張

集団的自衛権研究

国民の審判に従って中止せよ


 政府の「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長・柳井俊二前駐米大使)が五月以来すすめてきた集団的自衛権の行使についての議論が八月三十日の第五回の会合で一巡し、来月にも報告書が政府に提出される見通しです。

 安倍首相の改憲論に国民多数が反対していることは、参議院選挙の結果をみてもあきらかです。安倍首相が選挙後の懇談会で「政府の責任に変更はない」といって研究を継続させているのは、国民の審判を否定する許しがたい態度です。

法治主義の破壊

 懇談会の議論は、安倍首相が諮問した四つの類型すべてについて、現行憲法のもとでも可能とする方向に導くものとなっています。

 米艦を自衛隊が防衛するのは「解釈を変えて行使するのが望ましい」(第二回)。アメリカ本国に向かう弾道ミサイルを自衛隊が撃ち落とさないのは「日米同盟の根幹が揺らぐ問題」(第三回)。他国の部隊を守るため武器を使って「駆けつけ警護」も「可能」(第四回)。武力行使と一体化した活動が憲法違反という「一体化論」は「国際的に通用しない」(第五回)など―。

 これらの問題はどれも、「日本防衛」と無関係の武力行使です。憲法が禁止した集団的自衛権の行使にあたるため、従来、政府が否定してきたものばかりです。

 日本領土が外国から侵略されてもいないのに、インド洋やイラクなどの戦場に出動し、米軍が交戦している相手に自衛隊が武力で攻撃するということは、日本がアメリカの交戦国にたいして、友好協力関係を犠牲にして、自ら開戦に突入することを意味します。

 戦争を放棄している日本が、「日本防衛」とまったく関係のない国際紛争の解決のために武力を行使するのは憲法九条一項にも反することは明白です。安倍首相がやろうとしているのは、戦争放棄という憲法の中核的な部分を骨抜きにすることにほかなりません。戦争の道を再びすすむのではないかと国民が懸念をつよめているのは当然です。

 集団的自衛権の行使が憲法違反だということは、憲法が施行されてから六十年間の国会議論で政府がくりかえしてきた憲法の確定解釈です。日米軍事同盟強化論者や憲法改悪論者ばかりを集めて憲法解釈をくつがえすのは、憲法にたいする事実上の“クーデター”であり、絶対に許せることではありません。

 憲法という成文法をその時々の政権が自由に解釈して変更することほど危険なことはありません。憲法は、前文で「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し」とのべているように、政府をしばっています。戦争放棄、交戦権否認、戦力不保持を明記した九条はそのためのものです。

 憲法を最高の規範にしなければならない政府が勝手に憲法の意味を解釈するのは、憲法の存立意義を否定し、法治主義を根底からつきくずすことです。国家権力は憲法に拘束されるという立憲主義をふみにじる安倍首相の態度は国際社会でも通用するわけがありません。

九条が「歯止め」

 戦前、天皇制政府と軍部は国民の意思など無視して侵略戦争を強行し、二千万人ものアジアの人びとと三百万以上の日本国民を犠牲に追いやりました。過ちをくりかえさせない歯止めは国民の意思にかかっています。明文改憲も解釈改憲も許さない運動がいよいよ重要です。


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