2007年8月31日(金)「しんぶん赤旗」

主張

消費税増税

審判無視した、国民への挑戦


 安倍改造内閣が、国民には消費税の増税、大企業向けには法人実効税率を引き下げる「税制改革」に固執する姿勢を明らかにしています。

 七月の参院選で国民は、住民税増税をはじめとする庶民増税、弱肉強食の「構造改革」路線に与党大敗という形で明確な審判を下しました。

 それにもかかわらず、安倍晋三首相は「改革は厳しくとも続行していく」と語り、新内閣の基本方針に「消費税を含む税体系の抜本的改革を実現させる」と明記しています。

 安倍内閣にまともな反省は一切ありません。

ごまかしの議論で

 額賀福志郎財務相は初閣議後の記者会見で、年金の国庫負担引き上げのために、「骨太方針」に沿って消費税増税を議論すると語っています。額賀氏は民主党に「責任」を果たすことも求めています。

 安倍内閣が六月に決めた「骨太方針」は、今年度をめどに消費税を含む「税制改革」を実現するとのべています。財務相の発言は、「構造改革」のシナリオである「骨太方針」と、そこに盛り込まれた消費税の増税をあくまで強行する政権の構えを改めて表明したものです。

 額賀財務相が消費税増税の口実として、基礎年金の国庫負担を二分の一に引き上げる財源の確保をあげていることは、国民を何重にもあざむくごまかしです。

 六月の住民税増税をもたらした定率減税の廃止は、もともと公明党と自民党が基礎年金の国庫負担引き上げの財源にすると言って持ち出してきました。定率減税は一九九九年に恒久的減税として、所得税の最高税率の引き下げ、法人税率の引き下げと同時に実施されました。このうち廃止は定率減税だけという不公平極まりない増税です。しかも年金財源に回ったのはごく一部にすぎません。大部分は大企業向けの研究開発減税や、大資産家向けの証券優遇減税などに流用されています。

 流用によって国庫負担引き上げの財源には二・五兆円もの穴が開きました。その穴を埋めるために“今度は消費税増税”というのは再三再四、国民を踏みつけにする議論です。

 額賀財務相は道路特定財源について聞かれ、現状維持の方針をのべるだけでした。国と地方で六兆円近い道路特定財源を一般財源化するなど、国庫負担の引き上げは歳出の見直しですぐにも実行できるはずです。そんな努力すらせずに、消費税増税など口にする資格はありません。

 何より、額賀財務相が消費税増税を含む庶民負担増を強調しながら、大企業については「世界各国と法人税のイコールフッティング(条件の同一化)を考えなければならない」と減税の大盤振る舞いを説くのは、弱肉強食の立場以外の何物でもありません。

財界の要求と応援

 消費税は、価格にすべて転嫁できる大企業には実質負担ゼロの税金であり、消費税を増税し、法人税を大幅に引き下げることは財界の年来の要求です。日本経団連の御手洗冨士夫会長(キヤノン会長)が「今回の選挙で現政権の政策・実績が否定されたわけではない」と政権を応援し続けているのは、「構造改革」が財界の要求そのものだからです。

 安倍首相は庶民増税への厳しい世論を前に、参院選では消費税増税を自ら国民に提起することさえできませんでした。財界仕込みの異常な逆立ち税制を正すため、国民の審判に挑戦する政権を再び大きな世論で包囲していこうではありませんか。


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