2007年8月30日(木)「しんぶん赤旗」
イラク兵役延長 強制するな
米帰還兵が中止要求
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【ワシントン=山崎伸治】兵役期間が終わっても除隊を認めないという米軍の「ストップ・ロス」制度の中止を求めて、一人のイラク帰還兵が二十六日から一週間、ワシントン市内中心部の公園・モールに「監視塔」を設置し、連日二十四時間の抗議行動を行っています。二十八日には支援する地元の平和活動家が集まり、「ストップ・ロスのストップを」と気勢を上げました。
この帰還兵はエバン・ナッペンバーガーさん(22)。陸軍の情報分析官として一年間、イラクに派遣されました。その間、何度も夜通し監視員を務めたことをヒントに、高さ六フィート(約百八十センチ)のやぐらの上から「ストップ・ロス」の中止を要求することを思いつきました。ワシントン州ベリンガムでの成功を踏まえ、首都でも実施しています。
「ストップ・ロス」は一年の派遣期間が終了しても、本人の意思に反して一年から一年半、派遣が延長されるという制度。イラク駐留の長期化で、兵員の確保が困難になる中、陸軍、海兵隊が積極的に採用しています。
その結果、イラク派遣が二度目、三度目という兵士が急増。国防総省は公式の数字を公表していませんが、ナッペンバーガーさんは「これまでに二十万人が軍に引き止められている」と推測しています。
延長にあたって軍は「賞与」の提供を約束しますが、支払われないケースもあると言います。また延長を拒否したために、禁固刑に処せられた兵士もいます。
集会ではナッペンバーガーさんが「監視塔」の上からハンドマイクで行動の趣旨を説明。反戦イラク帰還兵の会(IVAW)ワシントンDC支部長のジェフリー・ミラードさんは、「ストップ・ロス」で除隊が延期になった結果、イラクに派兵されたという自身の体験を紹介しました。
海兵隊員の息子がかろうじて三度目のイラク行きを免れたというティナ・リチャーズさんは「(米軍は)全員志願制の軍隊だと言うが、ストップ・ロスはまったく『志願』ではない。兵士は志願もせず、脅されてイラクに送られている」と批判しました。
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