2007年8月29日(水)「しんぶん赤旗」

安倍改造内閣

タカ重用 世界警戒


 海外メディアは安倍晋三首相が二十七日の内閣改造や与党・自民党の役員人事で要所に右翼的、「タカ派」の顔ぶれを集めたことに強い警戒心を示し、今後の対アジア外交の行方を注視しています。


支持回復「未知数」 中国

 【北京=山田俊英】人民日報は「国際論壇」で、「安倍首相は内閣支持率の低迷で総選挙に打って出る勇気がない。そのため力を蓄えて時機をうかがうことにした」と背景を説明。「内閣支持率が回復しなければ、安倍首相は自民党内の政権継続反対の声を放っておくわけにいかなくなる」が、「内閣大改造で危機を打開できるか未知数だ」と論評しました。

 新華社通信も「国際観察」で、「彼ら(新閣僚)が安倍政権の『強心剤』になれるか未知数だ」と論じました。同電は、参議院で劣勢に追い込まれた状況からすると「新内閣は薄氷を踏むようなものだ」と指摘しました。

 また、安倍首相が掲げる「美しい国づくり」「戦後レジームからの脱却」「憲法改正」は「民生問題に関心を持つ民衆を引きつけられなかった」と分析。「新内閣が挫折すれば、自民党内で安倍首相の責任を追及する声はさらに高まる」として「日本の政局は大激動の可能性がある」と述べました。

香港でも強い批判

 香港ATVテレビ(英語)は二十八日朝のニュースで、「安倍首相の内閣改造と自民党役員人事では、『タカ派』が中心的なポストを占めたとの声が出ている」と報道。

 ATVのニュースは、「たいへんなタカ派」町村氏の外相指名について、「町村氏は中国にたいし歴史博物館の展示を見直すよう求めている。彼はこれらの展示が第二次世界大戦での日本をゆがめていると主張する」と指摘。新財務相の額賀元防衛庁長官は昨年六月、北朝鮮のミサイル発射実験直後に、日本は海外の基地にたいする軍事的攻撃能力を高めるべきだとのべたと紹介しました。

 同じく香港紙・明報二十八日付も、町村新外相が文部科学相だった一九九八年に「歴史を改ざんする右翼出版社の歴史教科書」の検定を合格としたり、高村防衛相は「対北朝鮮強硬派である」と指摘。麻生・自民党新幹事長は、「日本のタカ派の代表的人物の一人で、親米、対中国強硬派。右翼的発言を繰り返し、侵略の歴史を美化している」と批判しています。

英紙が日中関係注目

 英紙フィナンシャル・タイムズ(アジア版)二十八日付は、「博物館から『反日展示物』の撤去を中国に要求してきた」町村外相のもとで「改善された中国との関係維持」ができるかどうかに注目しています。

「町村外相」に波紋 韓国

 二十八日付の韓国各紙は、安倍改造内閣に町村信孝外相が入閣したことに強い警戒感を示しています。

 中央日報は「小泉政権で外相を務めた当時、歴史教科書問題などで韓日関係において相当に右派的な傾向を見せた人物」だと指摘。京郷新聞は、町村氏が「新しい歴史教科書をつくる会」主導の歴史わい曲教科書を検定合格させた人物だとして、「韓日教科書紛争を引き起こした張本人」であり、小泉首相の靖国神社参拝も積極的に支持してきたと報じました。

 韓国日報は、「町村氏の外相復帰に韓国などの隣国は神経をとがらせている」とし、前回の外相時代に首相の靖国参拝を支持し、南京大虐殺を疑問視する文章を外務省ホームページに掲載したことをあげて、「過去の歴史をわい曲、美化する言行で波紋を起こした」と批判しました。

 ハンギョレ紙は、自民党幹事長に就任した麻生太郎氏についても、「創氏改名は朝鮮人が望んだ」といった暴言によって韓国で知られている人物だと伝えています。

批判に逃げの一手 ドイツ

 安倍内閣改造について、ドイツの海外向け公共放送ドイチェ・ウェレは二十七日の電子版で、批判をかわす「逃げの一手」と報道しました。

 同放送は内閣改造で町村氏や高村氏など、人気があった小泉首相のときに任命された「古い顔が主要なポストを占め」「麻生前外相が自由民主党の幹事長になった」と古さを強調して伝えました。

 ドイチェ・ウェレは安倍首相が参院選挙で大敗し、世論調査で支持率が約20%に低下したのは相次ぐ「政治とカネ」のスキャンダルで閣僚が三人も辞職し、年金問題での失敗が国民を怒らせたからだとし、安倍首相は内閣改造で批判をかわす「逃げの一手を打ったと評論家はみている」と報じました。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp