2007年8月26日(日)「しんぶん赤旗」

イラク駐留米兵からの手紙

“占領 展望なし”

国内増派論をけん制


 「ワシントンでの政治議論は、実に非現実的だ」。イラクに駐留する米軍の現役兵士がニューヨーク・タイムズ紙(十九日付)に連名で寄稿し、イラク情勢の「改善」を理由に軍事占領支配の正当化をはかろうとするブッシュ政権や議会の動きを批判しました。(ワシントン=鎌塚由美)


 投稿したのは、歩兵部隊として掃討作戦の最前線にいる米陸軍の第八十二空挺(くうてい)師団の兵士七人です。兵士たちは、十五カ月にわたる駐留でイラク情勢を実際に目にしてきたとし、「紛争は徐々に制御できるようになっているという最近のメディアの報道に疑問を持っている」と表明。こうした主張は「欠点があり、米国中心の枠組みからの見積もりだ」と指摘、「毎日目にしている人々の間の、政治的社会的な不安の高まりが無視されていると感じている」と述べています。

困惑の戦場

 兵士たちは「イラク軍の指揮官たちが信頼できるパートナーであるという報道は、ミスリードであり誇張だ」とも指摘。米軍は「戦場の戦力のバランスがまったく不明のまま、決意の固い敵と、疑わしい同盟者との間の困惑する状況のなかで作戦を行っている」とも述べました。

 兵士らは、「駐留米軍がイラク人を専制君主の支配から解放したかもしれないが、イラクの人々の自尊心も奪ったことをわれわれは認めなくてはならない」と訴えています。また「イラク人はわれわれを占領軍と呼び撤退を迫ることで、彼らの尊厳を取り戻すことが最良だと、もうすぐ気づくだろう」と述べ、米軍の占領継続に展望がないと指摘しました。

 九月半ばに予定されるイラク現地司令官による戦況報告を前に、ブッシュ政権は戦争継続正当化の世論工作を続けています。これを受けて米議会では、イラク視察を終えた民主党議員の一部から、戦争継続支持の声が出ています。

 兵士たちの寄稿は、このような状況が生まれるのを懸念してのものです。

 議会の夏期休会中に、国防総省が“慎重に指揮”したイラク視察を行った議員たちです。ベアード下院議員(民主)は態度を一転させ、米軍撤退期限を明記した法案にはこれ以上賛成しないと表明。ワシントン州の地元紙で、「イラクの治安確保に必要なだけ米国はイラクにとどまるべきだと確信している」と述べました。

 民主党指導部はこれまでブッシュ大統領の増派計画に反対し、即時撤退とは言わないものの撤退期限を法案に盛り込むかたちで、ブッシュ政権への対抗姿勢を強調してきました。

 しかし、もともとイラク戦争に対する態度が一枚岩でない民主党内の弱みが露呈し、足並みの乱れが目立っています。

民主は変化

 二十二日付のワシントン・ポスト紙は、増派作戦に反対してきたクリントン、オバマ両民主党大統領候補が増派作戦での「前進」を評価し始めるなどの変化も伝えました。

 クリントン上院議員は、増派政策発表直後の一月には「イラクでの長期的成功に寄与しない米軍の増派より、むしろわれわれは段階的な撤退を開始すべきだ」と述べていました。しかし二十日には、「われわれはイラクでの戦術を変え始め、一部地域、特にアンバル州では、戦術変更が奏功している」と語りました。

 オバマ上院議員も一月には「兵力のエスカレーションは間違いだ、イラクの宗派間暴力への対処は軍事的ではなく政治的対応が必要だ」とブッシュ大統領に伝えたものの、最近では「もしバグダッドに三万人の兵力を投入すれば、短期的に一部の暴力を制圧することができる。疑いのないことだ」(二十日)と述べました。



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