2007年8月24日(金)「しんぶん赤旗」
主張
官房長官疑惑
二重計上のなぞは消えない
内閣の中枢を占める官房長官が、自らにかけられた政治資金の疑惑さえ満足に説明しない―まさに“政権末期”としかいいようのない事態です。塩崎恭久官房長官が、政治活動費を二重に計上して報告していたことが明らかになっても、職員の「私的流用」に責任を押し付けて、一切説明しようとしていないことです。
塩崎長官には、事務所費のうち一千万円以上が使途不明になっているなどの疑惑もあります。疑惑に自らこたえないのでは、内閣の要としてその資格はありません。
「私的流用」では済まぬ
塩崎長官の政治活動費の二重計上は、塩崎氏の政治資金疑惑を追及してきた「しんぶん赤旗」日曜版が、取材のなかで突き止めました。
政党や政治団体の政治資金は、「政治資金収支報告」として毎年総務省か各県の選挙管理委員会に届け出、選挙に使った資金は、「選挙運動資金収支報告」として選挙ごとに選管に届けることになっています。二重計上は、この二つの報告書の届け先が違うことを悪用したもので、手の込んだ悪質なものです。
日曜版が、塩崎氏が支部長を務める自民党愛媛県第一選挙区支部の二〇〇五年分の政治資金収支報告書と、同じく〇五年総選挙の選挙運動費用収支報告書を調べたところ、金額も日付も支出先も同じ支出が見つかりました。二重計上ではないかと塩崎事務所に問い合わせたのに、「調査中」とさんざん待たせたあげく、塩崎事務所として発表したのが、六百万円あまりの政治活動費の二重計上は事実だが、それは一職員が「私的流用」をごまかすためにやったことで、事務所に責任はないという、人を食ったような話でした。
詳しい内容はぜひ最新号の日曜版(八月二十六日号)をごらんになっていただきたいと思いますが、たとえ職員の私的流用だったという説明がそのとおりだとしても、なぜそのごまかしのために提出先の違う報告書に二重計上したのか、政治資金のごまかしはこれだけだったのかなど、疑問が残ります。
報告書にはいずれも、同じ領収書のコピーが添付されていました。それを見るだけで二重計上であることは一目瞭然(りょうぜん)です。領収書の現物は三年間保管する義務があります。報告書は当然、塩崎事務所の責任者がチェックして提出しているはずです。六百万円もの大金の「不正」に気がつかないとすれば、塩崎事務所の日常の政治資金の取り扱いがいかにずさんで不透明かを自ら告白しているようなものです。
なにより問題なのは、塩崎長官自身の責任です。塩崎氏は事務所に説明を任せたままで、自らは一言も説明していません。疑惑を抱かれた政治家は、自ら説明責任を果たすという、最低限の責任さえ果たしていないのです。内閣官房長官としてはもちろん、国会議員として資格が問われるのは当然です。
安倍首相の責任問われる
安倍政権では政治団体の事務所費の架空計上など「政治とカネ」をめぐる疑惑が相次ぎ、発足以来三人の閣僚が辞任あるいは自殺しました。先の参院選でも国民のきびしい審判の理由の一つとなったのは明白です。
この問題では、塩崎長官が内閣の要として追及を免れることができないのはもちろん、安倍晋三首相自身の対応がきびしく問われます。塩崎氏があくまで疑惑にこたえないなら、安倍首相は来週はじめの内閣改造を待つまでもなく、塩崎氏を官房長官から罷免するのが当然です。