2007年8月22日(水)「しんぶん赤旗」

主張

UR(旧公団)住宅

20万戸削減の強行は許せない


 都市再生機構(略称UR)が、UR(旧公団)住宅の二十万戸削減計画を住民不在の密室で作成していたことが、「しんぶん赤旗」の報道などで明らかになりました。

 居住者の不安と怒りを背景に全国公団住宅自治会協議会が九月に住宅売却・削減阻止の緊急集会を開くと決めるなど運動が高まっています。

財界主導の居住破壊

 多くの住宅運動団体は、居住保障とその安定は憲法二五条に定められた「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」であるとして「住宅は福祉」をスローガンに居住の安定を政府や自治体に求めてきました。それに真っ向から反する「居住破壊」の計画が六月、「規制改革三カ年計画」として閣議決定されました。

 計画では、独立行政法人・都市再生機構の賃貸住宅(旧公団住宅)について、現在の七十七万戸の「規模は過大」であると決め付け、「削減計画を明確にする」とし、「二〇〇八年までに結論、結論を得しだい措置」することを強引に求めています。

 重大なことに、機構はこの不当な要求を丸のみにし、保有・管理住宅のうち二十万戸を削減する計画を作成していました。本紙が報じた同機構内部資料によれば、削減対象は全国の約六百団地、戸数にして全体の約26%に相当する衝撃的なものです。

 このうち、全国の団地の類型化で「他用途活用団地」に分類された団地では▽大規模団地の集約化で30―40%削減し用地を他用途に活用する▽小規模団地をつぶし更地化して売却する▽建物を民間売却や居住者への払い下げも検討する―という手法で二百十七団地約十六万七千戸を削減しようとしています。

 対象となった団地は年金生活や単身高齢者など新しい住まいを確保することが困難な階層が多く住むところです。居住者は「建て替えを期待していたのに更地にして売却なんて…」と不安と怒りを募らせています。

 もともとこの計画は「官から民へ」という小泉構造改革路線の一環で、安倍内閣が継承している財界主導の「規制改革・民間開放推進会議」が提唱してきたものです。国民の居住の場を民間に売り渡す暴挙です。

 機構側はホームページで、「現在、賃貸住宅のストックの再生・活用方針の検討・作業を行っている」と本紙が報じた内部資料の存在を認めながら、検討中の「不確定な情報」と言い訳し、「居住の安定を脅かすような『追い出し』などということはあり得ない」と開き直っています。

 しかし、機構が閣議決定に従い団地売却・削減をふくむ計画の策定作業をおこなっていることは明らかな事実です。「追い出しなどあり得ない」というなら、「削減計画」を撤回し、政府の「規制改革三カ年計画」に従えないと表明すべきです。

 団地の「再生計画」をいうなら市場家賃をもとにした三年ごとの家賃値上げをやめ、高家賃を引き下げ、負担能力に応じた家賃制度への改善、計画的な修繕や改築によって狭さの解消をはかる、老朽化した団地についても一律建て替えではなく、多様な住宅改善をすすめるなど、誰もが住み続けられる団地をめざす、住民合意の計画こそ必要です。

住宅政策の公共的役割

 一九九五年の社会保障制度審議会(首相の諮問機関・〇〇年に省庁再編で廃止)は住宅政策について「生存と生活の基盤である住宅について、…福祉との連携が必要である」と勧告しています。貧困を打開し格差拡大を解消するうえで、住宅政策の公共的役割が改めて問われます。


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