2007年8月21日(火)「しんぶん赤旗」
主張
中華航空機炎上
炎と煙 ヒヤリとさせられた
月曜日の午前、航空機から立ち上る激しい炎と黒煙の映像に、けだるさを吹き飛ばされたという人も多かったのではないでしょうか。沖縄・那覇空港で起きた、中華航空機の爆発・炎上事故です。
さいわい乗客百五十七人と乗員八人は、緊急避難用のシューターなどを使って脱出し、全員無事でした。しかし、避難が一瞬遅ければ、大惨事ともなりかねない事態でした。事故を外国の航空会社が起こしたものと片付けず、大量交通機関である航空機の安全向上に役立てることが大切です。
事故原因の徹底究明を
今回の事故は、航空機が着陸して駐機場のスポットに入り、乗客が降りる寸前に起きました。航空機からは管制官に、異常を伝える連絡はなかったといいます。爆発・炎上が、なぜ、どのようにして起きたのか、事故原因の徹底究明は、何にも増して重要です。
航空機が駐機場に入れば、エンジンを停止させます。その際燃焼室の温度が急上昇するため、エンジン内に大量の燃料が残っていると、発火することがあるといいます。あるいはタンクからエンジンへ燃料を送るパイプなどから漏れた燃料が、高温の機体に触れて発火する可能性も指摘されています。
爆発が起きたのは左側のエンジンですが、その前に右側エンジンから燃料が漏れ、出火しているのを目撃したという証言もあります。運航・整備にあたる中華航空はもちろん、機体を製造したボーイング社やエンジンメーカーにも協力を求め、原因を徹底的に調査すべきです。
今回事故を起こした中華航空は、一九九四年には旧名古屋空港で着陸時にエアバス機の墜落事故を起こし、二百六十四人もの犠牲者を出したことがあります。それだけでなく、世界各地で相次いで事故を起こし、世界で最も事故の多い航空会社のひとつといわれてきました。
日本に乗り入れる外国の航空機や航空会社の安全確保は、所属する国が責任を負うのが原則ですが、日本に乗り入れる外国の航空会社が増え、日本国内で外国航空機が起こす事故も急増するなかで、近年、日本政府が日本の空港で、外国航空機に立ち入り調査をおこなうことも始まっています。
しかし、そのための体制はまだまだ不十分で、国土交通省によれば、外国の航空会社一社あたり、年にせいぜい一回程度というのが実情だといいます。安全向上のためには、日本に乗り入れる外国航空機の安全対策についても、抜本的な対策の検討が不可欠です。
世界の航空業界では、航空需要が伸び悩み、航空会社の競争が激化する中で、安全対策を後回しにし、できるだけ安上がりで飛ばすやり方が大問題になっています。大量交通機関である航空機の事故は、いったん事故が起きれば大量の犠牲にも直結します。人命は何にもかえられません。外国の航空会社と国内の航空会社を問わず、安全確保に万全の対策を講ずるべきです。
大事故の予兆見逃すな
日本でもここ数年、政府に規制緩和路線と、航空会社のもうけ本位の経営が重なって、一歩間違えば重大事故に結びつく、小さな事故やトラブルが続発してきました。こうした予兆を見逃さないことが大事故の防止につながります。
さいわい犠牲者が出なかった中華航空機の事故を教訓に、安全対策を根本から見直し、強化することこそ、政治の責任です。