2007年8月20日(月)「しんぶん赤旗」

主張

軍事情報保護協定

国民の目をふさぐ危険な狙い


 日米両政府が十日締結した「秘密軍事情報保護協定」(GSOMIA)は、秘密軍事情報の漏えい防止をたてに、マスメディアと国民の知る権利を大きく制約することにもなる危険なとりきめです。

 協定の締結はアメリカの要求によるものです。日米軍事一体化を拡大・強化するうえで、アメリカが日本に共有させる秘密軍事情報の保全を日本に徹底させるのがねらいです。日本政府は秘密保護の措置の強化を義務付けられました。それは軍事動向から国民をさらに遠ざけ、海外で戦争する態勢づくりを加速することにつながることはあきらかです。

戦争態勢づくりを加速

 アメリカは、自衛隊が海外の戦場で米軍とともにたたかい、弾道ミサイル攻撃からアメリカ本土と在日米軍基地を守るなど、集団的自衛権の行使を前提にした役割を日本に求めています。イージス艦情報などの漏えいを防ぎ、秘密保全の徹底を義務付けることを条件にして、秘密扱いにしているアメリカの軍事情報を日本に共有させ、役割を果たさせるのがアメリカのねらいです。

 安倍政権がアメリカいいなりに、海外で戦争する道に進もうとしているのに、軍事動向にふたをするGSOMIAの締結は日本の平和にとって有害無益です。

 協定の内容は、口頭、映像、電子、磁気、文書、装備、技術の形態にかかわらず、日本政府が秘密に指定した情報のすべてが対象です。

 日本政府はいまでも十二万八千件もの軍事情報を秘密指定し、メディアも国民も軍事動向がわからないようにしています。協定の締結で軍事情報の秘密指定がさらに増え、米軍、自衛隊の国民的監視をますます困難にするのはあきらかです。

 政府はいまでも秘密指定をたてに、国会にたいしてさえも、米軍や自衛隊の情報を隠し、軍事作戦についてまともな説明をしません。イラクで航空自衛隊が何人の米兵を運んだのか、バグダッドに空輸した自衛隊輸送機になぜ銃弾の跡ができたのかなども、いっさい説明しません。協定を理由にして、政府がこうした傾向を強めるのは必至です。

 協定は国内法の整備をうたっていません。国民の反発を避けるためです。しかし、アメリカが協定をテコにして、現行国内法の改定や新法の制定を要求してくることは大いにありえます。戦時の秘密情報漏えいを死刑とするなど厳しい秘密保全措置をとっているアメリカの措置と「実質的に同等の保護を与える」と協定が規定しているからです。

 日米地位協定の刑事特別法や日米相互防衛援助協定の秘密保護法はすでに一般国民をも対象に加え、自衛隊法も二〇〇一年の改定で一般国民を「そそのかし」の罪の対象にしました。これらの規定が将来、強化・拡大される可能性もあります。

 軍事情報を秘密にし、軍機保護法で国民の目と口をふさいで侵略戦争に突き進んだ戦前の誤りを繰り返させるわけにはいきません。

国会は十分な審議を

 GSOMIAは日本の海外で戦争する態勢づくりを加速し、憲法の保障する国民の知る権利をふみにじるものです。それにもかかわらず、政府は国会承認を受けることなく、十日に発効させました。これは政治的に重要な条約は国会にかけるとした「大平外相三原則」(一九七四年)に明白に違反しています。

 国会は憲法違反のGSOMIAについて十分な審議を行い、問題点を洗い出す必要があります。


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