2007年8月18日(土)「しんぶん赤旗」

主張

「白い恋人」偽装

あまりに愚かな食の背信


 北海道の土産物としてよく知られるお菓子「白い恋人」で、賞味期限の改ざん・偽装が行われていました。

 製造している札幌市の菓子メーカーは、全商品の回収、無期限の操業停止に追い込まれました。今年一月には大手洋菓子チェーンの不二家が消費期限切れ牛乳の使用や不衛生な工場の問題で企業の存亡を問われたばかりです。同業他社が、不正で大きな社会的批判を浴びたというのに、「自分だけは大丈夫」とでも思っていたのでしょうか。あまりにも愚かで、許せない食の背信行為です。

食品メーカーの責任

 「白い恋人」の賞味期限を一―二カ月延ばす改ざんは、十一年前から常態化していたといいます。同社では「白い恋人」の賞味期限を四カ月と定めていましたが、「六カ月でも品質劣化はなかった」「包装フィルムの効果に自信があった」(同社社長)と、経営トップも承知のうえで偽装を繰り返していたのです。

 食品衛生法、JAS(日本農林規格)法は賞味期限について、通常の保存方法で品質劣化が起きるまでの期間としています。これは「期限を超えた場合でも品質が保持されていること」を求めており、期限を超えたらすぐ食べられなくなるのではなく、品質劣化まで余裕時間があるのが当たり前です。

 「劣化はなかった」などという理屈を社長自らが口にするようでは食品表示ルールの「イロハのイ」さえ理解していないお粗末さといわれても仕方ありません。その上「包装がいいから」とウソの賞味期限を表示するなどとんでもないことです。

 無責任な製品管理は「白い恋人」だけではありません。同社が今年六―七月に行ったアイスクリーム類の自主検査では検体の七割から大腸菌群が検出されました。保健所には報告せず、こっそり廃棄処分し、一部はそのまま市場に出していました。七月にはバウムクーヘンからも食中毒の原因となる黄色ブドウ球菌が検出されています。工場の衛生管理がいかにいいかげんかということです。

 問題が発覚するきっかけになったのは内部告発でした。それがなければいまでも見逃され続けていた可能性があります。同社では早い段階で偽装や菌の汚染を知りながら、保健所へ届けず、握りつぶす態度をとっていたからです。

 行政の対応にも疑問があります。保健所は十日の立ち入り検査で問題を把握しながら、その公表を指導せず、会社まかせにしていました。なれあいといわれても仕方ない対応です。日常的な衛生管理への指導、食品表示の実態把握など厳しい行政の対応がされなければ、消費者は安心して「食べる」ことができません。

 「白い恋人」でなにが起こったのか、まず徹底した事実の解明をすすめなければなりません。適切な処分と責任の所在の明確化も必要です。それなしに、失われた消費者の信頼回復はありません。

安全こそが「使命」

 北海道の食品加工会社「ミートホープ」のひき肉偽装が発覚したさい、同社の社長は「昔の肉屋の感覚で(不正を)やった」と語りました。もうけ本位で、食の安全は二の次というモラルを欠いた食品メーカーが後を絶たないことに、消費者は不安を募らせています。

 メーカーも行政も、姿勢をただすべきです。不正は絶対に割に合わないこと、安全確保は「食」に携わる者の最大で最低限の責任であることを、社会の当たり前のルールとして確立する必要があります。


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