2007年8月17日(金)「しんぶん赤旗」
自爆テロ死者500人
米軍侵攻後、最大の犠牲
イラク
【カイロ=松本眞志】カタールの衛星テレビ・アルジャジーラは十六日、イラク北部ニナワ州で十四日に発生した同時多発爆弾テロの死亡者が五百人以上、負傷者が三百人以上に上ったと報じました。米軍の二〇〇三年のイラク侵攻後、一度のテロによるものとしては最大の犠牲者数です。
同テレビによると、現場に近いシンジャル病院には大勢の負傷者が運び込まれ、同病院のモハメド院長は「医師や治療薬が不足し、緊急の援助が必要だ」と訴えています。
テロの標的となったのはヤジディ教徒です。クルド人の多くが信仰しているとされるヤジディ教はイスラム教スンニ派教徒から異端宗教の扱いを受けてきました。事件について、駐イラク米軍のミクソン北部師団長は、ヤジディ教徒が国際テロ組織アルカイダから「異教徒であり、去るべきだ」との脅迫を受けていたと語っています。アルカイダはイスラム教スンニ派教徒が多数を占めているといわれています。
同師団長は今回の事件を「民族浄化」「ジェノサイド(集団虐殺)」と非難しましたが、事件は、米軍が十四日からディヤラ州で米兵一万人とイラク治安部隊六千人を投入し大規模軍事作戦を開始した直後に発生しました。この米軍の作戦強化がテロを拡散しているとの指摘もあります。
イラクのタラバニ大統領は「ヤジディ教徒はジェノサイド戦争の犠牲者」と述べ、マリキ首相は「犯罪事件」として調査委員会の設置を命じました。
アラブ連盟も犯行を非難し、イラクでの国民和解の実現を呼びかけました。国連の潘基文事務総長は「無実の市民に対する思慮を欠いた暴力は決して正当化できない」と訴えました。
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