2007年8月17日(金)「しんぶん赤旗」
主張
世界的な株式不安
投機的な活動を放置するな
先週末から始まった世界的な株価下落は、今週に入っていっそう下げ幅を拡大しています。米国株の急落を受けて全面安となり、十六日の東京株式市場は、昨年十一月以来、一時一万六千円台を割り込みました。
米欧日の中央銀行は、株価急落が世界的な金融危機に陥ることを避けるために、総計で四十兆円を超える巨額な資金を供給しました。こうした措置は、とりあえずの連鎖的危機の回避策にはなっても、世界の株式市場・金融市場の矛盾の根源にメスを入れるものではありません。
根源に投機化、ドル不安
今回の世界的な株価急落の直接のきっかけは、アメリカの住宅ローン(サブプライムローン)の焦げ付き拡大といわれます。これは、もともとはアメリカの低所得者向けの住宅ローンが証券化されて、世界中の金融機関が購入しているものです。
そのために、今回の株価急落は同ローンに投資していた欧州の金融機関から始まり、米日へ波及するという経過でした。同ローン関連の損失は最大一千億ドル(約十二兆円)にのぼるという予測もあり、日本でも野村ホールディングスが七百億円の損失をかかえているといわれています。
世界的な金余りのなかで、巨額な投機資金を動かすヘッジファンドが数倍に膨張し、運用資産残高は一兆五千億ドルを超えています。累積した資金が株式市場に流入し、ここ数年は世界的に株式ブームが続いてきました。しかし、今年に入ってから、すでに世界的に株価急落が四回も起こるなど、信用不安の影がしだいに濃くなってきています。
世界的な株価不安、国際金融不安にたいしては、市場に資金を供給する緊急措置だけでなく、根本的には、投機的活動にたいする国際的な監視と実効ある規制措置を検討することが求められます。
今回の世界的な金融不安の引き金となったアメリカの住宅バブルの破たんは、アメリカの実体経済のゆがみも表しています。〇七年四―六月期の住宅投資は同9・3%減と五・四半期連続の減少となりました。
さらに、アメリカの財政赤字と経常収支の「双子の赤字」が拡大し、ドル急落への懸念が強まっています。ブッシュ政権下の二〇〇二年から〇六年までの五年間の経常収支赤字の累計は約二兆八千億ドル(約三百三十兆円)にまで膨れ上がっています。ドル不安を解決するには、「双子の赤字」を拡大する経済政策の根本的転換が求められます。
世界的な金融不安の拡大は、金利引き上げの時期を探っている日本銀行の金融政策にも大きな影を落としています。日本では、アメリカの国際収支赤字を日本などからの資本流入で穴埋めするために、日米金利差(日本の超低金利)を維持する金融政策をとり続けてきました。これは、日本の金融経済にとって大きな歪(ゆが)みをもたらしているだけでなく、アメリカの経済政策を転換するためにもならないものです。
株式投資のリスク周知を
日本では近年、政府・日銀・金融界が一体となって「貯蓄から投資へ」の政策誘導をおこない、国民の小口資金が株式市場や投資信託へ大量に流入しはじめています。
政府や金融界が株式投資をあおることは、結果的に、株式市場の破たんのさいには、多大な被害を一般庶民に押し付けることになりかねません。株式投資は、預貯金にくらべて大きなリスクを伴っていることを、この機会にあらためて周知させることも必要でしょう。