2007年8月14日(火)「しんぶん赤旗」
「政治とカネ」自民の“身体検査”
国民の批判に危機感
疑惑解明は不問に
安倍晋三首相は二十七日にも内閣改造・自民党役員人事を行います。改造について首相は「政治資金の透明度を高める(よう取りまとめを指示した)党規約の上に立って行いたい」と述べ、「政治とカネ」の問題を判断基準の一つにする考えを示していますが――。
◆新規約了承
七日に開かれた、自民党の党改革実行本部(本部長・石原伸晃幹事長代理)の総会。この場で党の新規約案が議論され、了承されました。
新規約の内容は、自民党所属の全国会議員に、自らが関係する政治団体の過去四年間(二〇〇三―〇六年)の収支報告書について、重複計上や領収書添付漏れがないかなどを再点検させ、問題があれば修正を義務付ける、というものです。
具体的には、(1)本人や親族、秘書が代表者の政治団体(2)後援会(3)それらと同居するなど関係が深い政治団体―について、事務所の住所などを党本部に報告させます。さらに、二十日ごろまでに各団体の会計帳簿と収支報告書を突き合わせるよう求め、税理士らによる外部監査も促しています。
自民党はいま、「松岡利勝元農相や赤城徳彦前農相の事務所費問題が参院選惨敗の一因になった」とし、首相を筆頭に「政治とカネ」に対する国民の批判かわしに躍起です。
新規約には、これに基づく議員の“身体検査”を進め、内閣改造・党役員人事の参考にする狙いもあります。自殺した松岡氏の後任にすえた赤城氏が、松岡氏と同様の疑惑にまみれて辞職に追い込まれました。次の人事でも同じスキャンダルが繰り返されれば、政権に決定的なダメージを与えかねないとの強い危機感があります。“ポストが欲しいなら身ぎれいに”というわけです。
◆公表しない
しかし、これは動機も不純なら、「政治資金の透明性を高める」実効性にも乏しいものです。「政治とカネ」をめぐって真っ先にやるべきは、疑惑の真相解明です。松岡元農相も、赤城前農相も、参院選のさなかに不明朗な事務所経費の計上を指摘された塩崎恭久官房長官も、誰一人として領収書を公開せず、国民に納得のいく説明もしていません。新規約は領収書や会計帳簿の公表までは求めていません。「(領収書公開は)党で新規約が決まれば、それに沿って対応する」と繰り返してきた赤城前農相も、公表しないですむのです。
安倍首相は、疑惑閣僚を常にかばい、その政治姿勢が参院選大敗にもつながった自身の責任も、新規約や“身体検査”の徹底で不問に付したいのでしょうが、国民が納得するはずはありません。
新しい国会で、とりわけ野党が多数となった参議院で国政調査権を発動し、一連の疑惑を徹底解明することが求められます。(坂井 希)