2007年8月11日(土)「しんぶん赤旗」

主張

概算要求基準

「福祉削減ありき」を改めよ


 安倍内閣が来年度予算の大枠を示す概算要求基準を決めました。一般歳出の上限を四十七兆三千億円とし、大企業の要求に応える「成長力強化」などの重点要望枠を今年度の倍の六千億円に拡大しています。

 社会保障費は高齢化にともなう自然増の七千五百億円を二千二百億円も削り込む一方で、米軍再編経費は「必要な措置を講ずる」と特別扱いしています。

 安倍晋三首相は「『基本方針2007』に沿って改革を進める予算にしなければならない」とのべています。参院選で国民の厳しい審判が下されたにもかかわらず、「構造改革」路線に固執し続けようとしています。

国民の審判への挑戦

 安倍内閣が参院選挙前にまとめた「基本方針2007」(骨太方針)は、小泉内閣が策定した社会保障の削減や庶民増税の財政方針をそのまま引き継いでいます。

 参院選挙の結果を受けて、柳沢伯夫・厚生労働相さえ、これ以上、患者や国民の負担を増大させることはできないと記者会見でのべざるを得なくなっています。「骨太方針」そのものも、歳出削減は「機械的」にはやらないと明記しています。

 それにもかかわらず、安倍内閣は来年度の社会保障費を今年度と同額の二千二百億円、「機械的」に大幅圧縮する方針を掲げました。来年度も国民への新たな負担転嫁を推し進めようというのです。

 「介護難民」「医療難民」が急増しているように、社会保障の相次ぐ改悪で国民の生存権が脅かされる現実が広がり、「この政治のもとでは生きていけない」という憤りの声が上がっています。国民生活の深刻な実態を無視して、さらに社会保障費を削減するのは、あまりにも冷酷です。

 概算要求基準は、予算編成の作業と、消費税を含む「税体系の抜本的な改革」を並行して進めることにも言及しています。

 安倍首相は自民・公明の歴史的大敗となった選挙結果について、「私が進めつつある改革の方向性が、今回の結果によって否定されたとは思えない」と強弁しています。

 しかし、参院選では「消えた年金」、閣僚の「政治とカネ」の疑惑や暴言とともに、くらしを痛めつける小泉・安倍「構造改革」に対する国民の怒りが噴き出しました。与党の自民党、公明党が惨敗した根底には、「構造改革」の名で進められた、くらし破壊への国民の強い怒りがあります。

 小泉・安倍「構造改革」路線をひた走る概算要求基準は、この国民の審判に対する挑戦です。

 来年度の予算と概算要求基準の方針を直接決定付けたのは、六日の経済財政諮問会議に御手洗冨士夫・日本経団連会長ら四人の民間メンバーが提出した「平成20年度予算の全体像に向けて」という提言です。この提言は“家計が改善し景気回復が続くから、予算の最大限の削減をやっても大丈夫だ”、「消費税を含む税体系の抜本的改革を実現させる」と明記し、そのまま承認されました。

命とくらし守る予算に

 ここには国民生活への目線は皆無です。大もうけを上げている大企業に相応の負担を求める姿勢がみじんもないばかりか、暗にいっそうの大企業減税を要求しています。

 参院選で示された国民の審判と、財界のための財界による経済・財政運営は根本から矛盾していることが明白になっています。「福祉削減ありき」の姿勢を改め、国民の命とくらしを守る予算編成にしていくことが切実に求められています。


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