2007年8月6日(月)「しんぶん赤旗」

主張

広島・長崎62年

被爆者に寄り添う救済措置を


 アメリカが広島に、続いて長崎に原爆を投下してから六十二年になります。原爆による爆風、熱線、放射線は一瞬のうちに両市を壊滅させ、広島市では十四万人以上、長崎市では七万三千人以上の命を奪いました。そのときは助かった人たちもその後原爆症で苦しみ、毎年少なくない方たちが亡くなっています。

 被爆者の苦しみをこれ以上放置するわけにはいきません。政府はただちに被爆者救済の手を大きく広げる立場に転換すべきです。

六度目の勝利

 熊本地裁は先月三十日、原爆症認定申請を却下された熊本県内の二十一人の被爆者のうち十九人について、被爆者の訴えどおり国に申請却下処分の取り消しを命じました。全国十七地裁で係争中の認定訴訟のうち、被爆者は六度目の判決も勝利しました。司法の場では、国の認定基準の不合理性をきびしく断罪する流れが定着していることを示しています。

 熊本地裁の判決は、爆心地から一・三キロ以遠での被爆者の初期放射線による被曝(ひばく)線量について、国の計算値は「実際よりも低いものとなっている可能性」があるとのべています。数十キロ離れても「相応の放射性降下物による外部被曝を受けた可能性がある」ともいっています。原爆投下のあと爆心地に入った「入市被爆者」についても、飲食などを通じて体内に入り込んだ「残留放射線による内部被曝の影響が考慮されていないのは、相当とはいえない」ときびしく指摘しています。

 今回の判決もこれまでの判決同様、政府の原爆症認定基準それ自体の不合理性を断罪しています。原爆症認定基準を理由にした認定申請の拒否はもはや許されません。

 原爆手帳をもっている約二十六万人の被爆者のうち、原爆症と認定されたのはわずか0・8%、二千人余りにすぎません。政府の非人道的な態度をあらため、被爆者救済に大きく道を開く必要があります。そのために、判決を受け入れ、認定制度そのものを見直すべきです。

 被爆で苦しむ人たちが多数いるのに認定数をしぼっているのは、政府が原爆の恐ろしさを小さくみせようとしているからです。それは、日米核軍事同盟の強化政策と無関係ではありません。政府がアメリカの核兵器使用を認めているために、国民の核兵器拒絶反応をおさえるねらいがあることはたしかです。

 中曽根康弘首相はかつて、アメリカの核抑止力への依存を当然視し、日米共同作戦を行う際は、「核使用を日本側が排除する立場にない」と認めています(一九八五年二月十九日衆議院予算委員会)。安倍晋三首相もアメリカの核抑止力が「きわめて重要」といっています(四月二十四日衆議院本会議)。そのために、国連総会で核兵器使用禁止決議にも棄権しています。

 被爆者への救済に消極的な政府の態度の背景にあるこうした核政策そのものを根本的に見直すべきです。

正当化は許さない

 広島、長崎への原爆投下はどのような理由をつけようと正当化できません。久間章生前防衛大臣が原爆投下は「しょうがない」と発言しても罷免もせず、アメリカ政府のジョセフ不拡散特使が原爆投下を正当化する発言をしても抗議もしない安倍首相には被爆国国民を代表する資格はありません。

 被爆者救済に全力をあげるとともに、どんな核使用の正当化も許さず、核兵器全面禁止条約づくりを急ぐことが重要になっています。



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