2007年8月5日(日)「しんぶん赤旗」

主張

宇宙基本法案

「戦争する国」づくりの一環だ


 自民党と公明党が先の国会で駆け込み的に提出した宇宙基本法案について、日本経団連が「一刻も早い成立」をせまっています。

 宇宙基本法案は、宇宙開発の軍事利用を禁止した国会決議や軍事偵察衛星の保有は許されないとする政府見解の制約をすべてとりはらい、アメリカと同じように日本が宇宙開発を戦争に利用できるようにする憲法違反の宇宙軍拡法案です。

「非軍事」抹消の狙い

 宇宙基本法案には、かつての宇宙開発事業団法や現行の宇宙航空研究開発機構法に明記された、宇宙開発は「平和利用に限り」という文言がありません。逆に「国際社会の平和及び安全の確保並びに我が国の安全保障に資する」と規定しています。安全保障の確保を口実に無制限の軍事利用に道を開くねらいです。

 政府や国会が宇宙開発を平和利用に限定し、軍事利用を禁止したのは、なにより憲法九条があるからです。

 「日本における憲法のもとでございますから絶対に平和利用以外にはいたしません。逆に言えば軍事関係のことはいたさないという原則を堅持いたします」(一九六八年四月二十五日参院内閣委員会、鍋島直紹科学技術庁長官)、これが宇宙開発にあたっての政府の基本見解です。戦争放棄と戦力不保持を明記した憲法九条を基礎にする以上、宇宙の軍事利用を禁止するのは当然のことです。

 二〇〇三年以来打ち上げ運用している情報収集衛星を、自衛隊が「わが国の安全の確保」のためといって利用しているのは、本来許されないことです。宇宙航空研究開発機構法に「平和の目的に限り」と規定されており、いまのままでは脱法行為のそしりを常に受けざるを得ません。アメリカと同じように軍事偵察衛星を持ちたくても、保有は「できない」(一九八三年五月十六日参院安保特別委員会、角田禮次郎内閣法制局長官)という政府見解にも阻まれています。宇宙基本法案はこうした制約を根元からくつがえすことがねらいです。

 宇宙基本法案が日本だけでなく「国際社会の平和及び安全の確保」をもちだしたことはさらに重大です。アメリカとともに海外で日本が戦争することへの備えとなっているからです。海外で自衛隊が戦争する場合、戦場と周辺の軍事動向の把握が欠かせません。日本が偵察衛星や早期警戒衛星をもつことは海外でアメリカとともに戦争するための条件をつくることになります。

 宇宙開発の無制限の軍事利用に道を開くことは軍事予算を増大させることにもつながります。宇宙基本法案の制定をせまる日本経団連は七月十七日公表の提言で、「宇宙分野へ必要な額を配分すべき」とか「企業の産業技術基盤維持にも十分配慮すべき」といっています。宇宙開発の軍事利用に道を開いて大もうけするなどとんでもないことです。

国会決議に従え

 「国権の最高機関」である国会が一九六九年に採択した宇宙開発にかんする決議は、「平和の目的に限り」とうたっており、「非軍事」であることが明確です。政府が軍事利用を本格化しようとしてもそれを許さない歯止めとなっています。宇宙基本法案はこの決議を無力化するものです。国会がみずから採択した決議に反する法律を認めるのは自己否定につながります。

 日本を宇宙軍拡に引き込み、国民負担を激増させる宇宙基本法案は葬り去ることが国会の責務です。


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