2007年8月4日(土)「しんぶん赤旗」

ASEAN地域フォーラム

対話解決を側面支援


 東南アジア諸国連合(ASEAN)外相会議に続いてフィリピン・マニラで開かれたASEAN地域フォーラム(ARF)では、アジア太平洋地域の諸問題の対話による解決を促進するASEANの姿勢と六カ国協議の進展をうけた北朝鮮の積極的な外交が目立ちました。(マニラ=井上歩)


積極的だった北朝鮮の外交

 「今後も(米朝)双方が努力を続けていこうと話し合いました」「(核施設)無能力化を年内にやらなければいけないというのは、ちょっと早すぎるのでは」―。

 北朝鮮スポークスマンのチョン・ソンイル外務省副局長は、この間の米朝関係の発展を背景に、朴宜春外相とネグロポンテ米国務副長官との会談内容を誇らしげに語りました。

 非核化に向けた初期段階の着手を受けて、北朝鮮は数少ない国際会議出席の舞台で積極的な外交を続けました。朴外相はフィリピン公式訪問と合わせ七月二十八日に早々とマニラ入り。「結果を確信」との到着声明も出しました。

 マニラで朴外相は、フィリピンのアロヨ大統領やロムロ外相、韓国の宋旻淳外交通商相、ネグロポンテ氏らと相次いで会談。六カ国協議に前向きな姿勢を示し、各国から人道支援や協力の合意をとりつけ、ミサイル発射や核実験で国際社会に指弾され孤立した昨年までとは雰囲気を一変させました。

 ARFの閣僚会議では、とくに日本について「従軍慰安婦」問題や防衛庁の省昇格などをとりあげたうえで、日米を名指しして「敵視政策の撤回」を要求。また、「行動対行動」の原則を強調し、北朝鮮は寧辺の核施設稼働停止などを実行したから、日米がテロ支援国指定の解除、経済・エネルギー支援の実施などの「行動」に出るべきだと迫りました。

 ASEANは外相会議の共同声明、ARFの議長声明で繰り返し「六カ国協議への支援」を表明。北朝鮮の核施設稼働停止を歓迎しながら、「協議は前進しているが、やるべきことは多く残っている」(外相会議でのアロヨ比大統領の演説)との立場で、六カ国協議の進展をはかるための努力を続けました。

 議長国フィリピンは「アジア太平洋地域の平和と安定のためにASEANはあらゆることをする用意がある」(同大統領)として、会議冒頭から「ASEAN・ARFを六カ国協議参加国の対話の場にしてほしい」(ロムロ外相)と呼びかけ、三十一日夜には六カ国外相を大統領宮殿に招待。六カ国すべての代表が協議成功への決意をのべました。

 議長声明には、拉致問題と「従軍慰安婦」問題で応酬した日本と北朝鮮の両国の主張を取り入れた形で「人道上の懸念への取り組みの重要性」が記されました。

 軍事同盟や力の外交を排し、各国が平等の立場で、話し合いを通じて、自主的に問題の解決を図るというASEANが発展させてきた方式が、今年のARFでも力を発揮したといえます。


 ASEAN地域フォーラム(ARF) 東南アジア諸国連合(ASEAN)が域外国を招く形で始まった多国間の政治・安保の対話フォーラム。一九九四年、バンコクで第一回会合。自由な意見交換の重視とコンセンサスの原則で、信頼醸成、予防外交、紛争解決という三段階の目的達成のために前進しています。ASEAN十カ国を含む二十六カ国・一機関(欧州連合)が参加。


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