2007年8月4日(土)「しんぶん赤旗」
主張
足立区テスト不正
全国的「学力テスト」への警告
東京の足立区教育委員会が、区の学力テストで一位になった小学校で不正があったことを認めました。
校長と五人の教員がテスト中答案をみてまわり、誤答をしている児童に指で「トントン」とたたいて示唆をあたえたり、学習に遅れのある児童の答案を全体集計から除外するなどしていました。平均点をあげる工作です。
徹底した平均点競争
区教委は個々の教員が不正をはたらいたと強調しますが、それは問題のすり替えです。問題の核心は、学校ごとに平均点を公表し競争させる「学力テスト体制」が、同区の教育をゆがめたことです。
同区は四年前にはじまった都のテストで二十三区中最下位になり、その対策として、小二から中三までを対象にした区のテストをはじめました。平均点を学校ごとに公表して学校選択の参考とする、今年度からはテストの成績によって学校に配分する予算に差をつける―徹底した平均点競争が導入されました。
区教委の号令で、学校は過去問題の練習に明けくれました。テスト当日の四月十九日まで、新学期の内容を授業しない学校もあります。
テストで測れるのはせいぜい学習内容の一部です。それに授業がふりまわされれば、学力そのものがつかなくなります。しかもテスト体制で放置されるのは、本来もっともていねいに教えられるべき、学習の遅れがちな子どもです。
さらに、昨年の教育基本法国会で日本共産党が指摘したように、テスト対策で、運動会や自然教室などが中止・短縮されています。子どもが育つ土台をやせ細らせる愚行です。子どもたちのストレスはつよく、保健室に駆け込む子どもが一日百人をこえる学校もあるといいます。
教員自身も被害者です。校長は、平均点をどれだけ上げるのか目標を示せと区教委から指導され、数値で徹底的に管理されるようになりました。校長は、同様のことを教員にします。教員は異議を述べれば「君は異動してもらう」と脅されます。こうした体制こそ不正をうんだ温床にほかなりません。
この問題は全国的な問題です。政府はこの四月、国民の反対をおしきって全国学力テストにふみきりました。政府のねらいは、足立区のような「学力テスト体制」を日本全体にひろげることです。日本共産党は、次のことをつよく主張します。
第一に、全国学力テストの結果を足立区のような形で公表して、全国の学校を平均点競争にかりたてることをやめることです。全国学力テストの結果発表は十月です。政府の規制改革・民間開放推進会議は「学校ごとの結果公表」を主張しましたが、それは文科省の通知すら否定している乱暴な主張です。学校ごとの公表は自治体の権限であり、自治体は公表を見合わせるべきです。
第二に、そもそも必要のない全国学力テストをやめることです。学力の全国的調査なら数パーセントの抽出調査で十分です。全国学力テストに使われている数十億円もの税金は、少人数学級の実施にまわすべきです。
子どもの成長を中心に
政府は学力以外でも、数値目標で教育をしばろうとしています。しかし、それによって傷つくのは子どもたちです。日本共産党は国民のみなさんと力をあわせて、競争と統制の「教育改革」をやめさせ、子どもの成長を中心にすえた教育を築くために全力をあげます。
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