2007年8月3日(金)「しんぶん赤旗」
軍の演習場使用認めず
独裁判所 低空飛行騒音理由に
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【ベルリン=中村美弥子】旧ソ連軍の軍事演習場の返還を求める住民がドイツ国防省を相手にたたかっていた裁判で、ポツダムの行政裁判所は七月三十一日、国防省は爆撃演習が引き起こす騒音の影響を十分に考慮していないとして、ドイツ軍による軍事演習場の使用を認めないとする判決を出しました。裁判は、ブランデンブルク州北西部のキリッツ・ルッピナー原野の演習場返還を求める地元住民が訴えていたものです。
「連邦軍の敗北」―。独誌『シュピーゲル』(電子版)は、行政裁判所の判決をこう伝えました。判決は、戦闘機による上空百五十メートルの低空飛行は過剰な騒音を引き起こし、住民の生活に悪影響を及ぼすと判断し、ドイツ軍の演習場使用を禁止しました。
ドイツ軍演習場として使用が計画されている同原野は、同州の小都市ウィットシュトックと湖水と森の美しさを誇る観光地ラインベルクの間に広がり、面積約百四十二平方キロ。周辺住民の入会地でしたが、旧東独政府が強制収用し、四十年間にわたって旧ソ連軍の爆撃演習場として使用されてきました。東西ドイツ統一後、ドイツ政府は住民への返還に応ぜず、欧州共同開発の戦闘爆撃機ユーロファイターの爆撃演習場としての再使用を計画しました。
周辺住民はブランデンブルク州でフライエ・ハイデ(自由な原野)、北隣のメクレンブルク・フォアポンメルン州ではフライエ・ヒンメル(自由な空)などの運動体を組織し、十五年にわたって原野の返還を求めてきました。
ブランデンブルク州のプラツェック州首相(社会民主党=SPD)は判決後の一日、原野の自然を生かして観光を発展させたいとの意向を表明。フライエ・ハイデのシルゲ代表も、同州で一九九〇年以降、新たに一万八千人が観光産業に従事したと指摘し、原野の返還を求めて国防省に圧力をかけるよう州政府に要求しました。
国防省は、同原野で年間千七百回に上る空軍の飛行訓練を計画しており、爆撃演習や射撃演習も行うことを狙っています。国防省は今回の判決内容を精査して、控訴するかどうか検討するとしています。