2007年8月1日(水)「しんぶん赤旗」
参院選自民大敗 海外の反応
米紙
痛烈打撃受けた首相の民族主義
米紙ロサンゼルス・タイムズ七月三十日付は、参議院選挙の結果について「日本の有権者は安倍晋三首相の民族主義的執念に痛烈な打撃を与えた」と述べ、「日本を『美しい国』にするという情緒的で民族主義的な修辞は葬り去られる運命にあるようだ」と伝えました。
同紙は、「安倍氏の政治観が自民党内の民族主義派内ではぐくまれ」、首相に就任すると「戦争犯罪という被虐的視点からの脱却」「戦後レジームの終えん」を主張したと指摘。
教育基本法を改定して「学校に愛国的なカリキュラムによる教育を求め」、防衛庁を防衛省に昇格させ、「平和憲法改定に道を開く」国民投票法を通過させたことを、その端的な事例として挙げています。
しかし、「政治とカネ」をめぐる閣僚の相次ぐ不祥事や暴言、「消えた年金」などに国民の怒りは広がり、安倍首相の言う「戦後レジームの脱却は国民の心をつかめなかった」と、日本の政治学者の言葉も引用しながら論評しました。
ドイツ紙
政権の政策と国民の関心乖離
【ベルリン=中村美弥子】日本の参議院選挙の結果について、三十日付のドイツ各紙は自民党の大敗を大きく報じ、安倍首相は自民党内で求心力を失ったと伝えました。
南ドイツ新聞は、「安倍首相は敗北の責任を負わなければならない。愛国主義や憲法改定のような問題はほとんどの日本人にとって重要ではない」とし、安倍政権の政策と国民の関心と乖離(かいり)している点を指摘しています。
シュツットガルター・ツァイトゥングは、年金データ紛失をめぐる対応のまずさや閣僚のスキャンダルなど安倍政権の問題を挙げ、「有権者は政府に罰を与えたいという感情を表した」と伝えました。
ウェルト紙は、「安倍首相は改革者ではなかった」と述べ、首相就任時に国民が抱いた期待とは違ったと報道。安倍首相が地方の住民に関心を持たず、新たな愛国主義、平和憲法の放棄、安保政策の強化などを優先課題と位置づけていることが有権者の支持を失った原因だと分析しています。
英紙
有権者自民離れ 政権基盤弱体化
【ロンドン=岡崎衆史】参院選の結果について、三十日付英紙は、自民党大敗を報じるとともに、有権者の自民党離れによる政権基盤の弱体化を伝えました。
タイムズ紙は、「中産階級の報復で日本の与党が歴史的敗北」と題して報道。敗因について、自民党関係者が同紙に語った内容として、安倍首相の指導力の欠如、スキャンダルへの対応のまずさ、自民党長期政権への国民のうんざり感などを挙げました。
また、地方での自民党の敗北について、小泉前首相の改革が「最も深刻な影響をもたらし、怒りは最も強かった」と指摘。小泉前政権以来の痛みを伴う改革が地方の有権者の自民党からの離反を招いたと分析しました。
インディペンデント紙は「日本の有権者は安倍政権のスキャンダルまみれの十カ月に対して痛烈な判定を下した」と報じ、「安倍首相の権力は大幅に弱まった」としました。
ガーディアン紙も、安倍政権に対する「広範にわたる不満」が「大敗」をもたらしたと伝えました。
アラブ紙
貧富拡大が背景
【カイロ=松本眞志】アラブ首長国連邦紙ハリージ・タイムズは七月三十日、社説で参議院選挙での自民党の敗北について、深刻な経済状況が背景にあると指摘しました。
同紙は、安倍首相が唱える「美しい日本の創出」に反し、「この国では、庶民の日々の生計を含む経済的貧困や大規模化する貧富格差拡大の病がいっそう深刻化している」と主張。年金問題対策の失敗も同党に少なからぬ打撃を与えたとしています。
中国紙
政治変化に注目
【北京=山田俊英】中国各紙は三十一日付でも前日に続いて日本の参院選結果について報じ、安倍首相の続投表明に批判が強まっていることを伝えました。日本の政治の変化にも注目しています。
人民日報は国際面に「明白なことと不明なこと」と題する論評を掲載し、「日本の政局は今後新しいめまぐるしい変化の時期に入る」と述べました。
論評は、自民党の惨敗は明白だが、衆議院の解散・総選挙の時期と、政界の分化と組み合わせにどのくらい時間がかかるかは不明だと指摘しました。「安倍首相は、国民の不信任をなるべく早く補うつもりだろうが、勇気がない。ひたすら衆議院選挙での敗北を恐れている」と解説しました。
また、「安倍首相が進める『戦後レジームからの脱却』や三年での改憲といった政治路線はいっそう大きな抵抗にあうことになる」と予測しました。
環球時報は「有権者は安倍首相に反対のメッセージを伝えたのであって民主党が政権に就くことを支持したのではない」とする分析を紹介。「日本は二大政党制に向かう方向が現れているが、質的な変化はない。長年の自民党政治のため政界には複雑な関係が積み重なっている」との識者のコメントを伝えました。