2007年7月27日(金)「しんぶん赤旗」
主張
原発震災対策
安全確保へ抜本見直しは急務
新潟県中越沖地震による東京電力柏崎刈羽原発の被害状況が次々と明らかになっています。耐震設計想定の三・六倍にも達する激しい揺れに襲われ、放射能漏れなどが起こり、地震による原発事故という国民の不安が現実のものとなりました。
被災者は震災被害と原発事故の危険に直面しながらの避難生活を余儀なくされています。世界有数の地震国で、十分な耐震性と地震防災対策もなしに原発立地を進めてきた政府、電力会社の責任は重大です。安全確保策の抜本見直しは急務です。広がる風評被害に対する救済・支援策も急がれます。
事故の全容解明を
東京電力などが明らかにしただけでも、放射性物質を含む水や気体の外部への放出、原子炉点検用クレーンの破損、変圧器の損傷・火災、配管の損傷など事故が多発しました。地盤も変形し原発所内の道路に多数の亀裂が入りました。
地震によりこれだけの原発事故が起こったのは初めてです。
第三者による調査を行い、地震による事故の全容を国民に明らかにするとともに、安全対策とそのために必要な体制づくりを怠ってきた行政の責任を含め徹底的に原因を究明することが必要です。
多くの国民が驚いたのは、原発にまともな消火能力も、地震時の火災マニュアルもなかったことです。
地震で配管が損傷し消火栓が役に立たなかっただけでなく、変圧器の油火災に対応できる設備もありませんでした。自衛消防隊も組織できず、消防車が来るまで自力で火災を消火できない状態でした。
国際原子力機関(IAEA)は一昨年、柏崎刈羽原発に火災防護専門組織がないことなどを指摘し改善を勧告しました。日本政府にも報告されていました。必要な対策を怠ってきた東京電力と政府の責任は厳しく追及されなければなりません。
火災防護要員を原子炉運転要員が兼務したのでは地震と火災の両方には対応できません。必要な要員や化学消火剤、化学消防車などの設備を確保することはもちろん、地震時の二重三重の備えなど実効ある防災対策をとることは急務です。
今回の事故の実態をふまえ、緊急に全国の原子力施設における地震防災対策を総点検し、実効性ある計画へと根本的に見直すべきです。
同時に、政府は、耐震設計の想定をはるかに上回る揺れに襲われたことを重く受けとめるべきです。想定以上の揺れが原発を襲ったのは、今回で四回目であり、これまでの地震想定の破たんは明らかです。巨大地震の想定震源域の真上や活断層の近隣などの危険地帯に設置されている原子力施設については、その立地のあり方を抜本的に見直すべきです。
耐震見直しと総点検を
東京電力が中越沖で地震を引き起こす断層の危険性を過小評価し、国がこれを追認していたことも明らかになりました。今回の地震の震源断層は柏崎刈羽原発のほぼ真下までのびていることがわかりましたが、原発建設時の耐震評価の対象から外されていました。活断層の専門家は、原発建設で活断層が過小評価されていると指摘してきました。
原発はもちろん、再処理工場などすべての原子力施設で、活断層調査をやり直し、耐震基準の見直しを含めた耐震性総点検をおこなわなければなりません。必要な耐震補強を直ちに実施するとともに、安全性が確保できない原発は運転停止など必要な措置をとることを求めます。