2007年7月24日(火)「しんぶん赤旗」

都市再生機構の住宅削減

居住者追い出しやめよ

大企業への資産分け取りが狙い


 都市再生機構(旧住宅公団)が約七十七万戸の賃貸住宅のうち、約二十万戸を削減する計画を居住者不在の密室でつくっていた―という本紙報道(六月三十日付)は、三百万人におよぶ機構住宅居住者に、「建て替えを期待していたのに、更地にして売却なんて」など戸惑いと不安を与え、怒りの声が上がっています。機構が居住者の「居住の安定確保」をいうのなら、なすべきことは―。

 この削減計画は、「77万戸の規模が過大」として、「削減計画を明確にする」よう迫った政府の決定(「規制改革推進のための三カ年計画」、六月二十二日閣議決定)を受けておこなわれたものです。

 もともと、賃貸住宅削減という方向付けは昨年末の「規制改革・民間開放推進会議(議長・草刈隆郎日本郵船会長)」の第三次答申で明らかにされました。同答申では「削減目標の明確化」のほかに、「建て替え事業の厳選」「家賃減額(制度)の縮小」が打ち出されています。

 ネライは何か。それは五月三十日の規制改革会議第一次答申での「16兆円を超える巨額な資産を有する…機構本体及び関連会社等を含めた包括的な改革を推進する」ということにつきます。

 つまり、機構の持つ土地や住宅などの巨額資産を民間大企業に売却し、ゼネコンや不動産資本のもうけの対象にしようというものです。

 今回、本紙が明らかにした内部資料で、「団地内住宅を大幅に削減して生まれた用地を他用途活用」する、「団地をつぶし、更地化して売却」などの計画はその具体化にほかなりません。

 本紙の報道について、機構のホームページに「当機構が管理する賃貸住宅に関して『団地20万戸削減計画』『賃貸住宅145団地15万戸追い出し(更地化、団地削減)大計画』との報道について」なる文書が掲載されました。

 ここでは「当機構は、現在、賃貸住宅ストックの再生・活用方針の検討・作業を行って」いるとして、削減計画作業を行っていることを認めながら、「居住者の方々の居住の安定を脅かすような『追い出し』などはあり得ない」などと強弁しています。

 しかし、さきに指摘したように「規模が過大」だから削減計画を明確にすることは政府の方針になっています。もし、機構が居住者の立場で「居住の安定確保」を図るというなら、この政府方針には従えないとはっきりと意思表示すべきです。

 機構は過去のバブル崩壊後も「土地有効利用」事業という名目で大企業の遊休地を取得、開発の見込みのない土地を購入し、地価の下落で一兆円近い含み損(評価損)が発生したことがあります。(二〇〇四年五月)

 これは政府の「都市再生事業」の“手先”となっておこなった結果、生じたものです。

 機構は現在も小野邦久理事長(元建設事務次官)はじめ内閣官房審議官、国税庁長官、国土交通省国土計画局長、同住宅局長などが経営陣を占めています。この天下り構造が政官財の癒着体質を生み、経営責任をあいまいにし、居住者に高家賃などのしわ寄せをしてきました。

 七十七万戸の賃貸住宅を管理する世界一の“大家主”の責任を自覚するなら、「政府決定には応じることができない」と意思表示し、現在すすめている削減計画を中止し、居住者の意見を反映した再生計画こそ策定すべきでしょう。それが居住者の不安にこたえる唯一の道です。

 (日本共産党国民運動委員会・高瀬康正)


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