2007年7月23日(月)「しんぶん赤旗」

参院選で長時間労働 焦点

安倍政権 エグゼンプション狙う

共産党 残業の法的規制を提案


 「カローシ大国」と指摘される日本の異常な長時間労働。参院選で各党とも「長時間労働の是正」(自民、民主)を掲げていますが、その中身をみると―。(中村隆典)


 「元気な体で働き続けたかった。会社がもっと労働者の健康を考えていたら、こんなことにはならなかったのに」

 猛烈な長時間労働のためにうつ病となり、三年前、退職に追い込まれたNECの元社員(40)は、悔しそうに語ります。

 病院のコンピューター設置・保守が仕事。茨城など五県を飛び回り、週三、四回の出張はザラ。残業は平均で月百時間もあり、「どこからどこまでが労働時間かわからない生活」でした。

 いくら働いても決めた時間しか働いたことにならない「裁量労働制」のため、残業代が請求できるのは月三十時間まで。それ以上を請求すれば、成果主義賃金で「能力がない」と評価され、給与がダウンするからです。

 「労働災害に認定されましたが、通院中で仕事復帰はむり。職場の実態は変わっていないのが心配です。自分と同じような目にあわせたくない」

広がる二極化

 パートなど短時間労働者が増える一方で、正社員の労働時間が増える二極化が広がっています。

 「過労死ライン」(年間三千時間)を超える週六十時間以上働く人は、三十代男性では四人に一人、二十代後半から四十代前半でも五人に一人にのぼります。

 長時間労働のもとで、「脳・心臓疾患」の労災申請は、二〇〇三年度の七百四十二件から、〇六年度の九百三十八件に増加。「精神疾患」は、四百四十七件から八百十九件と倍増しています。

 日本ではヨーロッパと違い、法律に残業の上限がなく、長時間労働が野放しになっています。

 そのうえ、裁量労働制の拡大など労働時間規制の緩和が繰り返されてきました。これに成果主義賃金が加わって、長時間労働とサービス残業に拍車をかけているのです。

 ところが、安倍内閣は「労働ビッグバン」と称して、財界・大企業の要求に従って、長時間労働をもっとひどくする規制緩和をさらにすすめようとしています。

 残業代横取り、長時間労働野放しのホワイトカラー・エグゼンプションの導入を参院選後にもねらっています。

不払い2倍に

 日本共産党は、長時間労働そのものを法的に規制すべきだとして、「残業時間は年間三百六十時間以内とする」という政府の大臣告示を法定化することを掲げています。

 ヨーロッパで法制化している「連続休息時間」を導入し、最低十一時間を確保するよう提案。午前零時まで働いたら、翌日の出勤は十一時以降にします。

 ホワイトカラー・エグゼンプションは、長時間労働をひどくし、労働者の所得を数兆円規模で奪うものだとして、導入に反対しています。

 「サービス残業」について日本共産党は、二百八十回以上の国会質問で追及し、政府に「サービス残業」根絶の通達を出させ、この五年間で八百五十二億円の未払い残業代を支払わせました。

 さらに、「サービス残業根絶法」を制定し、悪質な企業は公表し、不払い残業代を二倍にして労働者に支払うことを掲げています。

民主党 裁量労働拡大 賛成

 民主党はこれまで、長時間労働とタダ働きを広げる裁量労働制や変形労働時間制の拡大(一九九八年)、裁量労働制の要件緩和(二〇〇三年)に賛成してきました。

 年間千八百時間の労働時間短縮の政府目標を取り下げ、労働時間短縮を労使の自主的な努力に委ねる「時短促進法」の改悪(〇五年)に賛成しました。

 参院選では「長時間労働の是正」として残業代割増率の引き上げなどを掲げていますが、労働時間自体の法的規制は掲げていません。

 ホワイトカラー・エグゼンプションについて、「実効性ある健康確保措置を設けないまま導入することは認めません」と導入自体には反対していません。

 社民党は、裁量労働制や変形労働時間制の拡大(一九九八年)、時短促進法の改悪に賛成しました。


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