2007年7月19日(木)「しんぶん赤旗」
主張
原発の耐震性
“想定外”に見合った抜本策を
新潟県中越沖地震に際して、東京電力柏崎刈羽原発がこうむった大きな被害に、不安が広がっています。
地震直後、変圧器の油漏れから火災が発生、原発を襲った揺れは、設計時の想定を最大で二倍以上も上回るものでした。使用済みの核燃料を貯蔵していたプールがあふれて放射能を含んだ水が放出され、大気中にも放射性物質が放出されました。トラブルは五十件を超します。
原発がいったん放射能漏れなどを起こせば、広い範囲に壊滅的な打撃を与えます。日本列島が地震の活動期に入ったといわれるなか、原発の耐震性については“想定外”に見合った抜本的な見直しが不可欠です。
地震国の「原発大国」
世界有数の地震国であり、同時に「原発大国」でもある日本では、多くの原発が過去に大きな地震があった震源域や地震の巣といわれる活断層の近くにあります。海底などにはまだ知られていない活断層が多いとみられます。このため、原発の耐震性については、これまでも繰り返し議論になってきました。
最近でも二〇〇五年の宮城県沖地震では、東北電力女川原発での揺れが、設計時の想定を上回ったことが明らかになりました。〇六年三月には金沢地裁で、北陸電力が建設中だった志賀原発2号炉について、国の耐震指針の合理性には疑問があるとして運転差し止めが命じられたこともあります(上告して係争中)。東海地震の想定される震源域にあり、断層が真下にあることが明らかになった中部電力の浜岡原発では、耐震性を強化するための補強工事が大急ぎで進められています。
政府は金沢地裁の判決などを受け、昨年、原発の耐震指針を改定しました。新しい指針は、活断層の地震の発生が想定される期間を延長するなどの改善は見られましたが、肝心の原発周辺の活断層についての調査は最新の調査を踏まえない不十分なもので、既存の原発については電力会社に新指針を踏まえた安全性の確認を要請するだけにとどめたなど、多くの問題をはらんでいます。
現に今回、柏崎刈羽原発に想定を超えた揺れをもたらした中越沖地震の場合、地震を引き起こした活断層が原発の真下まで延びていた可能性が高いことが、地震後の解析で明らかになっています。活断層調査の実態にメスを入れず、既存の原発については電力会社任せという国の姿勢では、地震の被害を防ぐことができないことは明らかです。
地震の揺れが“想定外”だったというのは、前提となった周辺の活断層調査や、原発そのものの耐震性について、根本から見直すべきだということです。原発は丈夫だから、少々の揺れでも大丈夫だという言い逃れはもはや通用しません。政府も電力会社も原発の安全性を総点検し、耐震基準そのものについての抜本的な見直しを図ることが不可欠です。
問われる東電の安全軽視
今回の地震で柏崎刈羽原発が重大な被害を受けたことに対し、世界各地の原発関係者から、事態を深刻に受け止める声が上がっています。地震にともなう原発の重大事態を考えれば当然のことです。
問題は、当事者である東京電力の対応です。地震直後の変圧器の火災については十分な対策をとらず、放射能水漏れなどのトラブルについても、報告に長時間を要しました。度重なる事故隠しの前歴とあわせ、これでは原発を設置し運用する資格が根本から問われます。安全軽視の体質を改めることがまず必要です。