2007年7月18日(水)「しんぶん赤旗」
赤城農水相の「事務所費」
領収書公開こそ 政治家のルール
両親の住む実家を後援会の「主たる事務所」として届け、「事務所費」などの経常経費を過去十年間で九千万円以上も計上していた赤城徳彦農水相。架空経費や経費の付け替えがあったのではないかとの疑惑をかけられています。しかし、記者会見で追及されても、「真実かかった経費を積み上げている」「法律に基づいて適正に処理している」と言い張るだけ。自殺した松岡利勝前農水相と、まったく同じ態度を取り続けています。
安倍首相も、「月八百円(の光熱水費)で大臣を辞めさせるのか」などとかばっています。月八百円とは、十年間で最も低かった年の光熱水費をわざわざ取り上げ、月割りにして示したものです。国民は、相次ぐ負担増と社会保障の切り捨てによる生活苦にあえいでおり、わずかな費用が払えずに電気や水道を止められ、餓死する人すら出ています。その中で首相のこの開き直り―国民の政治不信と怒りが高まるのは、あまりに当然です。
管理団体以外は
赤城農水相は、「領収書を公開しないのか」との問いに「公開については国会でさまざまな議論がされ、政治資金規正法によりルール化されている。国会議員としては、そのルールにのっとって処理をすべきだ」と答えています。「公開しないのがルールだ」と言わんばかりですが、本当にそうでしょうか。
政治資金規正法では、政治団体の支出は「経常経費」と「政治活動費」に分けられています。このうち経常経費(事務所費、人件費、光熱水費、備品消耗品費)については、従来は収支報告書で総額のみ報告すればよく、領収書を添付する必要はありませんでした。
先の通常国会で、一政治家が一つ持つことのできる資金管理団体の経常経費については、五万円以上の支出(人件費を除く)に領収書添付を義務付ける「改正」が行われました。ただし、施行は二〇〇八年分以降の収支報告から。しかも、資金管理団体以外の政治団体(「赤城徳彦後援会」もその一つ)は、領収書添付の対象外です。
政治資金規正法の「改正」前、「改正」後のいずれにおいても領収書を公開する法律上の義務は生じない―これが赤城農水相、安倍首相の言い分です。
当然熟知のはず
しかし、政治資金規正法は、帳簿と領収書の三年間の保管を義務付けています。これは、「政治団体の政治資金に関する基本的資料を保全することにより、収支報告書の真否等の調査を可能にしようとする」(自治省編『政治資金規正法詳解』)ためです。疑惑が浮上した場合に、公開して真偽を調べられるようにしないなら、何のための保管か、ということになります。
また、一九八五年に国会で議決された「政治倫理綱領」は、「政治倫理に反する事実があるとの疑惑をもたれた場合にはみずから真摯(しんし)な態度をもって疑惑を解明し、その責任を明らかにするよう努めなければならない」と定めています。この「綱領」は国会議員の所持する手帳に記載されており、農水相も首相も当然熟知しているはずです。
疑惑の解明から逃げ回る赤城農水相も、かばい続ける安倍首相も、議会制民主主義の担い手としての資質を著しく欠いています。参議院選挙での厳しい審判が必要です。(坂井 希)
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