2007年7月17日(火)「しんぶん赤旗」
英外交 変化の兆し
メディア注目 米追随から多国間主義へ
閣僚、戦争・軍事力偏重を批判
【ロンドン=岡崎衆史】先月末に発足した英国のブラウン政権が、ブレア前政権の過度の対米協力を軌道修正する兆しを見せていることがメディアの注目を集めています。
ブラウン氏は、首相としての最初の訪問先を米国ではなくドイツとし、十六日にメルケル首相と会談。今週中にはフランスも訪れ、サルコジ大統領と会います。訪米は早くとも七月末までありません。
十四日付英メディアは、「新しい関係の始まり」(ガーディアン紙社説)、「新首相と過去との印象的な決別」(インディペンデント紙社説)と指摘。BBC放送(電子版)は「シグナルは明りょうだ。英国の外交政策は小さな変化を経験している。ブレア時代は終わった」と評しました。
閣僚として最初の外交演説をしたのはアレクサンダー国際開発相です。米国の首都ワシントンで十二日、貧困根絶、気候変動、テロや紛争の根絶など国際的課題に対処するため「孤立主義者ではなく国際主義者であること、単独行動主義者ではなく多国間主義者であること…特別な利益ではなく基本的な価値によって動くことをわれわれは言葉と行動で証明しなければならない」と強調しました。
同氏は「多国間主義とはルールに基づく国際システムだ。国内で文明を維持するため法の支配が必要なように、国外で世界の文明を維持するためにもルールが必要である」と述べ、ルールに基づく多国間主義アプローチが国際課題に対処する上で求められると訴えました。さらに「二十世紀、国家の強さは破壊力で測られたが、二十一世紀は何を築けるかで測られなければならない」と述べ、戦争や軍事力偏重を批判しました。
アフリカ・アジア・国連担当国務相に就任したマーク・マロック・ブラウン氏は、十四日付英紙デーリー・テレグラフのインタビューで「ブラウン・ブッシュ関係が…ブレア・ブッシュ関係のように一心同体になることは決してありえない」と表明。ブラウン政権下の英米関係はブレア政権下と同じ徹底した対米従属にはならないとの見方を示しました。
また、「外交政策がより偏らないものとなることが私の希望だ」と述べ、対米関係同様に、欧州諸国との関係、台頭するインドや中国、オックスファムなど市民団体、市民社会との関係も重視する姿勢を示しました。
同氏は昨年末まで国連事務次長を務めた人物。多国間主義者で、イラク戦争や米国の新保守主義者(ネオコン)の厳しい批判者として知られており、国務相就任自体が新政権の外交の変化を示すものとみられています。
一連の発言にたいし、デービッド・ミリバンド外相は十五日、BBCテレビのインタビューで「米英関係はもっとも重要な二国間関係」と述べるなど、歯止めをかける動きも出ています。