2007年7月16日(月)「しんぶん赤旗」

主張

米イラク中間報告

悪あがきをやめて撤退めざせ


 ブッシュ政権が十二日公表したイラク情勢についての中間報告をめぐり政権への反発が広がっています。

 アメリカ議会では中間報告によってイラク戦争が「危険な方向に進んでいることが裏付けられた」との声があがりました。下院本会議は中間報告の公表にあわせて、来年四月一日を期限とする米軍撤退法案を二二三対二〇一の賛成多数で可決しました。イラク情勢を改善できないブッシュ政権への批判は与党・共和党内部にも広がり、今回の決議でも共和党から四人が賛成にまわるなど、撤退をめざす流れにいっそうはずみをつける状況になっています。

新政策は完全に破綻

 中間報告は、イラク軍の育成や同軍の治安活動参加については「満足できる」としながら、治安や宗派間対立の緩和について「満足できない」と評価しています。一月以来の米軍増派による軍事作戦強化がイラク国民の重大関心事である治安や宗派間対立の解消には無力だったことを、米政府が事実上認めたものです。

 “増派を完了してからまだ一カ月だから時間をくれ”とブッシュ大統領はいいますが、時間が問題なのではありません。外国軍が軍事支配していることがそもそもの誤りです。十六万人近い米軍のイラク駐留そのものを根本から問いただす声が広がっているのはそのためです。

 ブッシュ大統領はイラク新政策を発表したさい、「もっとも緊急の優先課題は、治安、なかでもバグダッドの治安」と強調しました。しかし、中間報告が認めたようにイラクの治安は悪化するばかりです。バグダッドの米軍の警護がとくに厳しいグリーンゾーン内ですら迫撃砲の攻撃が続発しています。開戦以来の米軍の死者も七月六日現在で三千六百人を超えました。米軍増派以降の四月から六月は毎月百人以上が死に、二〇〇三年のイラク侵略以来もっとも死亡者の多い三カ月となりました。

 深刻なのはイラク民間人の犠牲激増です。米軍は人口密集地をヘリと戦車で襲い、多数の市民を殺傷し、分離壁をつくって地区を丸ごと収容所化して市民の生活権を奪っています。地方でも空爆で三百五十人を殺害するなど各地で無差別殺りくをくりかえしています。ブッシュ大統領がイラク国民の犠牲激増に口をつぐんでいるのは問題です。

 「失敗は部隊の数が足りなかったからだ」といって三万人もの米軍部隊を増派しながら、治安は逆に悪化し、米軍の戦死者が増えていることに共和党からも反発が強まっています。大物といわれるルーガー前上院外交委員長までもが「増派計画は効果をあげていない」と批判し、ボイノビッチ上院議員がブッシュ大統領に米軍の段階的撤退を求める書簡を送るなどの動きがでています。

 アメリカ国民も、「USAトゥデー」紙などによる最近の世論調査によれば、七割が来年四月一日までの米軍撤退に賛成しています。

 ブッシュ政権は悪あがきをやめて、米軍撤退に踏み出すべきです。

自衛隊の撤退を急げ

 米軍のイラクからの撤退を求める声はいまや国際社会の動かしがたい流れです。イラク侵略とその後の軍事支配は国連憲章違反であり、撤退要求は当然です。安倍政権と自民・公明両党は憲法と国連憲章に違反する自衛隊のイラク派兵と米軍支援をただちにやめるべきです。

 この参議院選挙で反戦平和の党・日本共産党が前進することは、撤退を求める国民の意思を政府に突きつけることになります。



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