2007年7月15日(日)「しんぶん赤旗」
左派政権
ニカラグア ブラジル
教育・医療策含めIMFと合意
ニカラグア
【メキシコ市=松島良尚】教育や医療など社会政策を重視しているニカラグアのオルテガ政権は十日、国際通貨基金(IMF)との間で融資条件となる今後三年間の経済政策について基本的に合意し、覚書を交わしました。同国のロサレス中央銀行総裁は、合意には政府の社会対策計画が基本的要素として含まれていると強調しました。
IMFは声明で、「提案されたマクロ経済政策は、中期的に安定性を強化し信頼を醸成することと、(貧困撲滅などを掲げる)国連ミレニアム開発目標達成に向けた前進のための財源創出を両立させている」と述べ、オルテガ政権の貧困対策を認めました。
IMFは融資にあたり歴代政権に社会分野の予算を抑えることを条件として課していました。これを今回の交渉で打開することが、貧困克服を優先させるオルテガ政権の課題でした。
IMFと合意する必要性については、アルセ大統領経済顧問が「ニカラグアはうまく経済を運営しているとIMFが判断することでこの国の平穏ぶりを感じてもらえる」と強調。IMFが融資する予定の九千万ドル(約百十億円)は大きな規模ではありませんが、合意によって国際社会の信用を得て、内外の投資を促す構えです。
ただし同顧問は「これを最後にしたい」と述べ、IMFから脱却する姿勢を改めて示しました。
今年一月に発足したオルテガ政権は、憲法に立ち返って公的医療や義務教育の無償化を実現。五月からは「飢餓ゼロ」と名付けた七万五千家族を対象とする貧困対策をスタートさせ、家畜や農作物の種子などが入手できる二千ドル(約二十四万四千円)相当の「生産的引換券」を配布し始めています。
「奴隷労働」強いた192社名公表
ブラジル
【メキシコ市=松島良尚】ブラジル労働・雇用省は十日、劣悪な労働条件下で「奴隷的な搾取をしていた」百九十二の企業名を公表しました。おもには、大農園やアマゾン地域などでの木材分野の企業です。
同省によれば、これらの企業はすでに起訴され、労働者に対する賠償責任も問われています。前回公表した企業数は百六十三でした。公表の目的は、これらの企業の生産物の取り扱いについて他の企業に警告するためです。
同国のルラ政権は二〇〇三年から「奴隷労働を根絶する国家計画」にとりくみ、これまでに一万五千人を救出しました。
今月初めには、アマゾン熱帯地域の北部パラ州でサトウキビ農園を経営していたパグリサ社を摘発し、労働者千百八人を救出。サトウキビはバイオ燃料・エタノールの原料にするためでした。
労働者らは刈り入れのため半年前に採用されましたが、居住地からの交通費や食料、住居費などで法外な借金を負わされ、それらを差し引かれた給与は月十レアル(約千円)程度。農園内の下水設備もない不衛生な小屋と粗末な食事をあてがわれ、十四時間労働を強制されていました。労働者の多くが下痢、嘔吐(おうと)などの症状を訴えたといいます。
当局によれば、パグリサ社は労働者一人あたり千八百レアルの賠償責任を負う見通しです。
カトリック教会関係の非政府組織(NGO)などは、国際労働機関(ILO)が「現代の奴隷」と名付けた労働者は二万五千―五万人と推計しています。